
「シーマスター」は、高い防水性能と耐久性、そして実用性と美しさを兼ね備えたオメガの人気シリーズです。
1948年の誕生から70年以上にわたり、海洋探査や軍用、さらには映画『007』での着用など、多彩なシーンで活躍してきました。
数多くのシリーズのなかでも、とくに高い人気を誇るのがシーマスターです。世界中の時計ファンを惹きつけるシーマスターの魅力を、歴代モデルの概要とともにお伝えします。シリーズ誕生の歴史についても紹介するので、ぜひオメガのシーマスターに関する知識を深めてみてください。
オメガのシーマスターの歴史
シーマスターは、1948年に登場したオメガの人気シリーズです。初代シーマスターは、ブランドの創業100周年を記念して誕生。現在においては、水中でも陸上でも愛用できるダイバーズウォッチとして親しまれています。
シーマスターは、過去から現代に至るまでさまざまなモデルが誕生しており、その人気の高さがうかがえます。オメガにはシーマスター以外にも多くの人気シリーズがありますが、このシーマスターを基礎として発展したモデルも少なくありません。ブランドの歴史を語るうえで欠かせないシリーズとなります。
初代シーマスターの誕生
初代シーマスターが登場したのは1948年。原型となった「マリーン」というモデルは、それよりも16年も前の1932年に登場し、世界初の一般向けダイバーズウォッチとして当時は話題になりました。135mという当時としては非常に高い防水性能を備え、ダイビングのプロからも支持されました。
もともとシーマスターは、軍用時計として開発されました。耐磁性や防水性といった厳しい条件をクリアして作られた時計は、街や海、郊外など、どこにでも身につけていけるオールラウンドモデルとして一般市場へと展開されます。初代シーマスターは約60mの日常防水を備え、スクリューバックではなくゴム製パッキンで防水性を確保していました。ダイバーズウォッチというよりは、全天候型の実用時計として設計されていました。防水性能を持たせたのは、あくまでも「より幅広いシーンで活用してもらうため」だったのです。
初代シーマスターは時計の文字盤の中央に秒針があるセンターセコンドタイプをスタンダードモデル、時計の秒針が文字盤の中央ではなく、6時位置や9時位置などに独立して配置されているスモールセコンドタイプをクロノメーター仕様として展開されました。多くのファンに受け入れられたため、これらを基礎とし、さまざまなモデルが誕生するに至ったのです。
プロフェッショナルシリーズの誕生
オメガのシーマスターシリーズにとって、転機となったのが1957年に登場したシーマスター300です。それまでのシーマスターが「防水性能を備えたオールラウンドモデル」の時計であったのに対して、こちらは「本格的なダイビングモデル」です。BLANCPAIN(ブランパン)の「フィフティ・ファゾムス」やROLEX(ロレックス)の「サブマリーナ―」といった、本格派ダイバーズウォッチ発売の流れに乗る形で開発されました。
1970年代の中頃まで、デザインや仕様を変更しながら製造され続けたシーマスター300。その品質と優れたデザイン性で多くのファンに支持されたモデルです。
また、1957年はオメガにとって転換点となる年でもありました。初代シーマスターをもとに生み出されたのは、潜水性に特化したシーマスター300だけではありません。速度や時間の計測を得意とする「スピードマスター」に耐磁性を高めた「レイルマスター」と、機能にこだわりを持つ3モデルを一挙にリリース。アイコニックな3本は、プロフェッショナルシリーズとして親しまれています。
オメガのシーマスター歴代モデルを紹介
オメガというブランドの発展に、深く関わってきたシーマスター。歴史と伝統あるシリーズだからこそ、過去にはさまざまなモデルが誕生しています。「名称が複雑でデザインも多くてよくわからない…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、シーマスターシリーズの歴代モデルについて、わかりやすく解説します。それぞれのモデルの詳細情報もお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
1948年「初代シーマスター」
最初にお伝えしたとおり、初代のシーマスターは1948年に誕生しています。第二次世界大戦中に軍用時計として開発したモデルをもとに作られた時計は、機能的でありながらデザインも秀逸。あらゆる場面に対応できるオールラウンドモデルの時計として人気を集めました。
現代のような潜水性に特化したモデルではありませんが、初代シーマスターは非常に過酷な性能評価試験において、その有用性を証明しました。時計を普通航空便の外装部分に取りつけ、北極上空を通過するルートで約9時間航行。雨・風・温度と非常に過酷な環境下においても、シーマスターは動きを止めませんでした。1950年代からすでに、優れた耐久性を保持していたことがわかるエピソードです。
1957年「シーマスター300」
1957年に、初代シーマスターから防水性能に特化したモデルとして誕生したのがシーマスター300です。300という数字の意味は、「300m防水が可能なダイバーズウォッチを目指して開発された」ため。ブランドを代表するプロフェッショナルシリーズの1本としても知られています。
新たにダイビングウォッチとして開発されたシーマスター300は、水中での視認性を高めるためデザインにも工夫されています。初代シーマスターのケースが34mmであったのに対して、シーマスター300では39mmを採用。文字盤をブラックに、針を太いアロー型にしたのも、時刻を確認しやすくするための工夫でした。その後改良が加えられ、1964年に発表されたモデルでは、ケースはさらに大きく見やすくなっています。1967年には、イギリス海軍が公式ダイバーズウォッチとして依頼。その性能を広く知らしめたモデルとも言えます。
1962年「シーマスター30」
1962年に誕生したのが、シーマスター30です。前モデルの300が防水性能の目標を示したものであったのに対して、30の数字はムーブメントの大きさを示すためのもの。直径30mmの手巻きムーブメント(キャリバー)が搭載されていることを意味しています。
シーマスター30の特徴は、発売当初、ドレスウォッチとスポーツウォッチの2種類が存在していたという点です。ほどなくしてドレスウォッチは廃止され、スポーツウォッチのみが残りました。優れたキャリバーの搭載によって、高い耐久性とパワーリザーブを実現。中古市場には状態のよい品物も数多く出回っていて、使い勝手のよい腕時計として認識されています。
1964年「シーマスター600」
1964年に誕生したシーマスター600は、シーマスター300のような本格的なダイバーズウォッチではありません。むしろ、初代シーマスターのような、オールラウンドモデルとしての流れを受け継いだ製品といえるでしょう。
シンプルな外観で、さまざまなシーンで身につけやすいのがシーマスター600の魅力です。ダイバーズウォッチのような高い防水性能はありませんが、日常生活では十分な防水性能は有しています。ただし、現在の基準に照らし合わせると多少は物足りない点があります。オーソドックスなルックスと手巻き式の機構で、アンティークらしい魅力を堪能できるモデルです。
1966年「シーマスター120」
1966年に登場したシーマスター120は、防水性能120mにちなんで名付けられたモデルです。
それまでのシーマスター300と比べて防水性能をやや抑えることで、ケースの薄型化・小型化を実現。これにより、装着感が向上し、よりファッション性の高いダイバーズウォッチとして展開されました。
また、小ぶりな“ボーイズサイズ”のバリエーションも登場し、性別や手首のサイズを問わず、幅広いユーザーに対応したことも特徴です。さらにシーマスター120は、オメガのダイバーズウォッチとして初期に「日付表示機能」を搭載した代表的なモデルでもあります。 この実用性の高さが評価され、以降の多くのモデルにデイト機能が受け継がれていくきっかけとなりました。
1969年「シーマスター60」
続いて、1969年に誕生したのがシーマスター60です。こちらの数字は、「60m防水」を意味するもの。本格的なダイバーズウォッチではありませんが、デザイン性の高さから注目を集めたモデルです。ブラック、ダークブルー、ワインレッドの3つのカラーバリエーションが用意され、華やかでドレッシーな見た目を楽しめます。
本格的なダイバーズモデルが大きくがっしりとしたケースを採用しているのに対して、シーマスター60は37mmという扱いやすいサイズが使われています。リューズやベゼルも、ほかのモデルにはない存在感を楽しめるデザインです。「防水性能は欲しいけれど、あくまでもシュノーケリング程度」という方にとって、60m防水は十分な性能。デザインによる遊び心も楽しめるモデルとして、人気を集めました。
1971年「シーマスター600プロプロフ」
1960年代以降に高まった水中時計ニーズに応じる形で誕生したのが、1971年のシーマスター600プロプロフです。600という数字は、その防水性能によるもの。水深600mまで対応しています。プロプロフという言葉は、フランス語の「Plongeur Professionnel/プロンジュナー・プロフェッセネル」であり、プロダイバーを意味しています。その略称を造語として、時計の名前に使用しました。
シーマスター600プロプロフは、オメガが、はじめてモノコックケースを採用したモデルでもあります。ケースと裏蓋が一体化しているため、耐久性や防水性に優れています。ステンレスをくりぬいたケースは、無骨な印象ながら圧倒的な存在感を放つもの。ケースに設置された赤いボタンは、ベゼルの回転防止ロックを解除するために使用します。
1988年「シーマスター200」
1988年に登場したシーマスター200は、200mの防水性能を誇るダイバーズウォッチで、1995年まで製造されました。このモデルは、映画『007 ゴールデンアイ』でジェームズ・ボンドが着用していたシーマスター300の前モデルにあたるため、ファンの間からは「プレボンド」という愛称で呼ばれています。
シーマスター200は製造期間中にいくつかのバリエーションが登場し、針のデザインやケースの仕様に違いがあり、個体ごとのディテールを楽しむコレクターも少なくありません。現在でもヴィンテージ市場で高い評価を受けています。
1993年「シーマスタープロフェッショナルダイバー300M」
1993年に登場したシーマスタープロフェッショナルダイバー300Mは、オメガのダイバーズウォッチシリーズにおける重要なモデルであり、より本格的なダイバーズウォッチを目指して開発されました。このモデルは、1995年に公開された映画『007 ゴールデンアイ』でジェームズ・ボンドが着用したことで、歴代のシーマスターの中でも特に有名となり、認知度が急速に向上しました。
シーマスタープロフェッショナルダイバー300Mは、回転防止機能を備えたセラミックベゼルが特徴的です。さらに、丸型インデックスとバトン型の針がデザインに取り入れられ、視認性が高い夜光塗料を使用しています。これにより、暗い環境でも非常に読みやすく、実用性を兼ね備えています。
また、このモデルは非常に高性能でありながら、街中でも気軽に身につけられるデザイン性の高さを誇り、オメガのシーマスターシリーズの中でも特に人気のあるモデルとなっています。2018年には新たな進化を遂げ、「ダイバー300M」として現行モデルが登場し、その流れを受け継いでいます。
2000年以降のオメガのシーマスター歴代モデル
種類豊富なシーマスターには、2000年代以降もアイコニックなアイテムが多数登場しています。過去のモデルをもとに、より機能性やデザイン性にこだわって作られたアイテムも少なくありません。
過去を知ってからチェックしてみると、オメガというブランドの流れを、より深く実感できるのではないでしょうか。ここからは、比較的新しいシーマスターの歴代モデルを3つ紹介していきます。
2002年「シーマスターアクアテラ150M」
2002年に誕生したシーマスターアクアテラは、シーマスター120の後継モデルです。120mであった防水性能を150mにまで向上。そのデザインも、現代風へと刷新しています。2度のモデルチェンジを経て、現行モデルとしても今なお親しまれています。
シーマスターアクアテラには「海と地球」という意味が込められており、自然を感じさせるデザインが人気です。ダイアルのデザインでひと際目を引くストライプ柄はチークコンセプトと呼ばれ、シーマスターアクアテラにのみ使用されています。まるでクルーザーのウッドデッキを思い起こさせるようなデザインで、より海を身近に感じられるでしょう。上品でエレガントな雰囲気に、魅了されるファンも少なくありません。
2005年「プラネットオーシャン600M」
本格的なダイバーズウォッチとして誕生したシーマスターダイバー300Mを超える時計として、2005年に登場したのがプラネットオーシャン600Mです。その名前のとおり、600mの防水に対応。超本格派ともいわれる、ダイバーズモデルです。
シーマスターのなかには、優れた防水性能を持ちつつも、「日常において使い勝手のよいサイズやデザイン」にこだわったモデルも少なくありません。シーマスタープラネットオーシャンの特徴は、とにかく防水性能の高さを追求しているという点です。ケースの厚みは約16mmで、身につけてみれば、ずっしりとした確かな重みを感じられるでしょう。
プラネットオーシャンには色鮮やかなアイテムも多く、「オメガオレンジ」と呼ばれるカラーはこのモデルだけで楽しめるもの。オメガファンにも高く注目されています。
2017年シーマスター300の復刻モデル
2017年に「1957 Trilogy」の一環としてクラシックな復刻モデルが登場し、2021年には現代の技術を反映した新設計のモデルが再登場したことで話題を呼んだシーマスター300の復刻モデルです。ブランドの歴史を象徴するモデルの特徴を生かす形で、初代モデル特有のクラシカルな雰囲気を残しつつも、現代風へとアレンジしています。コーアクシャルマスタークロノメーター搭載により、現代ならではの優れた技術力も実感できる1本です。
独特の風合いを持つベゼルに、どこか懐かしさを感じさせるダイアルデザインは、復刻版ならではの魅力といえるでしょう。初代に慣れ親しんだ世代はもちろん、若者世代からも支持されました。あまりの人気ぶりに、2021年にも再度復刻。ヴィンテージ感と最新技術をバランスよく取り入れられます。
オメガシーマスター歴代モデルで見つける自分だけの一本
オメガといえば、シーマスターを思い浮かべる方も多いでしょう。長い歴史と多くのファンを持つシーマスターシリーズは、ブランドを象徴するアイテムです。いっぽうで、時代のなかでさまざまなモデルが誕生してきたからこそ、自分に合う1本がどれなのかわからず、悩んでしまう方も多いでしょう。今回紹介したシーマスターの各モデル情報を参考にして、好みのアイテムを見つけ出してみてください。
最新技術と洗練されたデザインを楽しめる現行モデルもおすすめですが、中古市場で以前のシーマスターを探してみるのもおすすめです。人気のシーマスターは、身近な人と被ってしまうケースも多いもの。アンティークに注目してみると、選択肢の幅も広がるでしょう。
参考文献・サイト
オメガ公式サイト:https://www.omegawatches.jp/