
2025年7月、金の価格がついに1グラムあたり17,000円を突破しました。
こんなニュースを見たり聞いたりしたことで「金に投資してみようかな」と考えた方も多いのではないでしょうか。
そのいっぽうで、SNSや投資家のあいだでは「金投資はやめとけ」という声も少なくありません。
ではなぜ、ここまで意見が分かれるのでしょうか?
この記事では、金投資にまつわる賛否の理由を整理し、2025年の最新情報をもとにメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。最後までぜひご覧ください。
目次
金投資に「やめとけ」という意見がある理由
「有事の資産」として評価される金は、インフレ対策としても注目されています。
それなのに、なぜ「やめておいたほうがいい」という声があるのでしょうか?
専門家や経験者が指摘するのは、以下のような課題です。
- 購入・売却時の高額なコスト
- 配当や利息がない特性
- 複雑な税制、価格変動や為替のリスク
- 保管の難しさ
さらに現在の歴史的高値では、「今から始めるのは危険」という意見も強まっています。
それぞれの理由を、具体的なデータとともに見ていきましょう。
①手数料の負担が大きいという指摘
純金積立を始めるとき、必ずついてくるのが手数料です。
主要証券会社では購入額の1.65%。専門の貴金属会社では2.5~3.0%が一般的。月1万円の積立なら、毎回165~300円が手数料として差し引かれます。
さらに問題となるのが、見えないコストの存在です。購入価格と売却価格の差であるスプレッド、年会費、保管料。これらを合計すると、年間で投資額の3~4%に達することも珍しくありません。
「他の投資方法と比べて割高すぎる」こう指摘する専門家がいるいっぽうで、「少額から始められる利便性は価値がある」という意見もあります。コストをどこまで許容するか。これが最初の判断ポイントです。
②配当や利息がないという特徴
金投資の特徴を一言で表すなら「待つ投資」です。
株式には配当金があり、債券には利息があり、預金には利子がつきます。
しかし金は、保有しているだけでは1円の収入も生みません。利益を得るためには、買った時より高い価格で売る必要があります。
この特性について、評価は二分されています。
「定期収入がないのは投資として不完全」という見方がある反面、「価格上昇による大きな利益が期待できる」という考え方もあり、これをキャピタルゲインと言います。また、企業の倒産や国の破綻に左右されない実物資産である点を、高く評価する投資家も多いのです。
③税制面での取り扱いが複雑という課題
2024年から始まった新NISA制度。
投資で得た利益が非課税になる画期的な仕組みです。
ところが、純金積立はこの制度の対象外となっています。金の現物を売却した際の利益は総合課税の対象となり、所得が多い方は最大45%の税率が適用される可能性があります。
いっぽうで抜け道もあります。金価格に連動するETF(上場投資信託)を新NISA口座で購入すれば、売却益に税金はかかりません。
※ETFの詳しい仕組みや特徴については、このあとの「①金ETFという選択肢」という章でくわしく解説します。
「純金積立は税制面で圧倒的に不利」という指摘がある反面、「現物として手元に置ける安心感は替えがたい」という価値観もあります。税金を取るか、安心感を取るか。投資家にとって悩ましい選択です。
④価格変動リスクと流動性の課題
金価格は生き物です。
世界経済の動き、地政学的リスク、各国の金融政策、為替レート。多くの要因が複雑に絡み合い、価格は日々変動します。短期間で数%以上の値動きも珍しくありません。
さらに厄介なのが流動性の問題です。株式や金ETFなら、スマホひとつで瞬時に売却できます。
しかし現物の金は違います。店舗や業者への持ち込みが必要で、即日現金化できないケースも多いのです。相場より安い価格での買い取りになることもあります。
この課題について、専門家の意見は分かれています。
「短期売買には明らかに不向き」という指摘がある反面、「長期保有なら短期的な変動や流動性は問題にならない」という見方もあります。投資期間や目的によって、リスクの重要度は変わってくるのです。
⑤為替の影響を受けやすい特徴
金価格はドル建てで決まります。そのため、円でドルを交換する際の為替レートに大きく左右されます。
円安時は金価格が上がりやすく、円高時は下がりやすい。2025年の金価格上昇も、実は円安の影響が大きく含まれています。
そのため日本人にとっては、「金価格が上昇しても、為替の影響で思ったほど利益が出ない」「金価格が下落し、同時に円高が進んで損失が拡大する」など、予想外の動きをすることもあります。こうした複雑な変動が、金投資の難しさを物語っています。
「為替リスクが読みにくすぎる」という懸念がある反面、「円安時には金投資が有利に働く」というメリットもあります。
⑥保管方法による様々なリスク
現物の金を手に入れたとき、まず考えなければならないのが「保管方法」です。
自宅で保管する場合は、盗難や紛失のリスクがあります。しかも火災保険では、貴金属が十分に補償されないケースが多いのが現実です。
銀行の貸金庫を利用する手もありますが、料金は銀行や貸金庫のサイズによって差があり、年間1万6,000円~3万円程度のコストがかかります。
また、業者に預ける場合は「消費寄託方式」が一般的です。これは業者が預かった金を運用できる仕組みで、もし業者が破綻すれば金が戻ってこないリスクを伴います。
このように「保管コストやリスクが負担だ」と考える人もいれば、「適切な方法を選べば解決できる問題」と考える人もいます。
⑦現在の価格水準に対する懸念
2025年8月現在、金価格は1グラム17,579円と史上最高水準に近い高さです。
過去のデータを振り返ると、金は高値をつけたあとに調整が入るパターンがよく見られます。
たとえば、金ETFの代表格「SPDR Gold Trust(GLD)」は2011年8月の高値から約45%下落し、回復までに約4年半を要しました。現物の金も同じく、2011年9月の高値から2015年末にかけて約44%下落しています。
こうした歴史から、「いま投資を始めるのは割高水準でリスクが高い」と慎重に考える人は少なくありません。
いっぽうで、「長期的には上昇トレンドが続く」「インフレや地政学リスクを背景に需要は強い」という楽観的な見方も根強くあります。
金投資のメリット
コストや変動リスクといった課題がある金投資。
それでも多くの投資家が注目するのには、理由があります。
資産形成とリスク分散の面で、金投資には他の投資にはない独特のメリットがあるのです。
とくに経済や政治が不安定な時期の価値保存機能、物価上昇時の資産目減り防止効果は、株式や債券とは異なる金ならではの特性といえるでしょう。
金投資の代表的なメリットを詳しく見ていきます。
①経済不安時の安定性
「有事の金」という言葉があります。
新型コロナウイルスの感染拡大。ロシア・ウクライナ情勢。世界が混乱に陥ったとき、株式や通貨が大きく値下がりする中で、金価格は上昇しました。これこそが金投資最大のメリットです。
企業の業績に左右されず、国の財政状況も関係ありません。実物資産として、リスク分散の強力な手段となるのです。
ただし注意点もあります。必ずしも経済不安時に上昇するわけではありません。この点は理解しておく必要があります。
②インフレ対策としての側面
物価が上がると、現金の価値はどんどん目減りしてしまいます。
そんな時に注目されるのが、金のような「実物資産」です。
実際、2024年から2025年にかけて日本でも物価上昇が続いており、インフレ対策として金投資を検討する人が増えています。
ただし、金が常に効果的というわけではありません。過去には1980年代から2000年にかけて、インフレが進んでいたにもかかわらず金価格が下落した時期もありました。専門家の中には「株式や不動産のほうが有効だ」と指摘する声もあります。
つまり、金投資は「万能のインフレ対策」ではなく、「いくつかある選択肢のひとつ」として捉えるのが現実的です。
2025年の金相場動向
史上最高値の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。
おもな上昇要因は以下の通りです。
- 中央銀行の動向
世界各国の中央銀行が金の購入を増加させています。とくに中国は2022年11月から2024年4月まで18ヶ月連続で金準備を増やしました。ただし2024年5月以降は増加が停止している点も注目されます。 - 地政学リスクの高まり
中東情勢の緊張、台湾海峡をめぐる懸念。これらの不安定要素が、金への資金流入を促しています。 - 金利政策への期待
アメリカの金利引き下げ期待により、利息を生まない金への投資魅力が相対的に高まっています。 - 円安の影響
円安進行により、円建ての金価格が押し上げられています。これらの要因により、投資家の金に対する関心は高い水準を維持しています。
多様な金投資のバリエーション
金投資には複数のアプローチがあります。現物保有だけが選択肢ではありません。
ETFや他の資産との組み合わせなど、さまざまな運用方法が存在します。
現物投資は手元に資産を置ける安心感がある反面、コストや保管の課題があります。状況によっては、他の手段のほうが効率的な場合もあるのです。
あなたの投資目的や資産状況に最適な方法を見つけるため、主要な選択肢を比較してみましょう。
①金ETF
現物の金を持たずに金投資ができる方法。それが金ETFです。
金ETFとは、金価格に連動する投資信託を株式と同じように証券取引所で売買できる商品です。実物を持たなくても、金価格の値動きに合わせて利益や損失が発生します。
代表的な金ETF
名称 | 手数料 | 特徴 |
---|---|---|
【1540】純金上場信託 | 年0.44% | 希望すれば現物の金と交換可能 |
【1326】SPDRゴールド・シェア | 年0.40% | 世界最大の金ETF |
【314A】iシェアーズ ゴールド | 年0.220%(税込) | 2025年新規上場の最新ETF |
※表は横にスクロールできます。
純金積立と比べると、金ETFはコスト面で大きな優位があります。
純金積立では手数料やスプレッドを含めて年間3~4%かかることもありますが、金ETFなら0.22~0.44%程度に抑えられます。さらに新NISA口座を利用すれば、売却益に税金がかからないのも魅力です。
いっぽうでデメリットもあります。金ETFは実物を直接持つことはできません。そのため「手元に現物資産を置きたい」というニーズには応えられないのです。
②分散投資
投資の格言に「卵を一つのカゴに盛るな」というものがあります。
すべての卵を一つのカゴに入れてしまうと、カゴを落としたときに全部割れてしまう。つまり一つの投資先に集中させると、その投資先が値下がりしたときに大きな損失となってしまうという意味です。
金投資をする場合も、「資産全体の一部」として取り入れるのが基本です。
配分例
- 株式:60%
- 債券:30%
- 金などの代替資産:10%
このように分散させることで、一つの投資が値下がりしても他の投資でカバーしやすくなります。
安定した収入を重視する場合は、配当や分配金がある商品も組み合わせましょう。
組み合わせ候補
- 不動産クラウドファンディング:1万円程度から始められ、年3~8%の分配金が期待できる
- 高配当株:年1~2回の配当金が受け取れる株式
金は価格上昇による売却益は狙えますが、配当や利息はありません。だからこそ「値上がりを狙う資産(金)」と「定期収入を生む資産(株・不動産)」を組み合わせることが重要なのです。
③投資スタイルに応じた選択肢
金投資にはさまざまなアプローチがありますが、重要なのは「どのタイミングで買うか」よりも、「自分の投資スタイルにどの手段が合っているか」を見極めることです。
投資スタイルごとの選択肢を以下に紹介します。
- 長期安定志向
・新NISAを利用した金ETFの積立が有効
・コストを抑えつつ長期的な値上がりを狙える - 現物資産の安心感を重視
・純金積立や地金購入を選ぶ
・保管コストはかかるが「手元に置く安心感」がある - 収益のバランスを求める
・金だけでなく、不動産クラウドファンディングや高配当株と組み合わせる
・「値上がり益」と「定期収入」を分散させられる
このように、金の価格そのものを追いかけるよりも、自分の資産配分や投資目的に合った方法を組み合わせることが、代替手段を活かした賢い運用につながります。
金投資を検討する際の判断基準
金投資には賛否両論があります。
メリットもデメリットも存在し、「正解」は人それぞれです。
重要なのは、あなた自身の状況と照らし合わせて判断することです。
金投資が向いている可能性がある人
- 長期的な資産保全を重視する方
- インフレや経済不安への備えをしたい方
- 分散投資の一部として活用したい方
- 実物資産の安心感を求める方
慎重に検討したほうがよい人
- 定期収入を重視する方
- 短期間での利益を狙う方
- コストを最小限に抑えたい方
- 複雑な仕組みを避けたい方
2025年に金投資を考えるなら
現状を踏まえると、純金積立よりも 新NISAを活用した金ETF のほうが、コスト面では明らかに有利といえます。
しかし最終的に大切なのは、あなた自身の「投資目的」と「資産状況」に合っているかどうかです。
判断のポイントは次の4つです。
- 投資期間はどのくらいを想定しているか?
- どの程度のリスクを許容できるか?
- 他の資産とのバランスは取れているか?
- 現物を保有する必要性はあるか?
金投資は、万能の正解があるわけではありません。
長期的な視点を持ち、自分にとって納得できる選択をすることが何より大切です。
投資は人生を豊かにするための手段。
あなたに合った方法で、無理なく続けられるスタイルを見つけてください。