
「GMTとは何?」と疑問に思ったことはありませんか。
GMT(グリニッジ標準時)は、世界中の時刻を管理する基準として欠かせない存在であり、現代の腕時計においてはGMT機能として幅広く活用されています。簡単に言えば、世界共通の時間のものさしです。
Apple WatchからロレックスのGMTマスターまで、多くの時計に搭載されているこの機能を理解すれば、海外旅行や国際的なビジネスシーンでも時差や日本時間との関係を直感的に把握できるようになります。
本記事では、GMTの基本的な意味から腕時計に搭載されたGMT機能の仕組み、さらに代表的なモデルや実用例までを、初めての方にもわかりやすく解説します。
目次
GMTとは?世界標準時の基礎知識

GMT(Greenwich Mean Time:グリニッジ標準時)とは、イギリス・グリニッジ天文台を通る本初子午線(経度0度)を基準に定められた世界標準時です。
GMTとは簡単に言うと、世界共通の時間の基準として定められた標準時間です。GMTは時間の統一化を図るために生まれた概念で、現在でもタイムゾーンシステムの基礎となっています。
GMTの歴史的背景を理解するためには、その成り立ちを知ることが重要です。19世紀の大航海時代や鉄道網の発達により、各都市が独自の地方時間を使用していることで生じる混乱を解決する必要がありました。1884年の国際子午線会議において、グリニッジ天文台を通る経線(グリニッジ子午線)を世界の本初子午線(経度0度)として正式に採用し、これを基準とした時刻がGMTとなります。
GMTは「経度15度につき1時間の時差」という基本原則に基づいており、世界中の時差計算の基準として長らく使用されてきました。この原理により、日時や月の概念も世界共通で管理できるようになったのです。
GMTとUTC(協定世界時)の違いとは?
現在の世界標準時は、GMTに代わって「UTC(Coordinated Universal Time:協定世界時)」が採用されています。
GMTとUTCのおもな違いは、GMT が天体観測(地球の自転)に基づく時間であるのに対し、UTCはセシウム原子時計に基づく高精度な時間であることです。
UTCは原子時計の精度により、1秒単位での正確性を実現しており、現代社会の高精度な時間管理に適しています。「GMT/UTC」や「ETC/GMT」といった表記で併記されることも多く、実際のシステムでは両方の概念が使われています。
ただし、GMTという表現は腕時計業界では現在も広く使用されており、「GMT機能」や「GMTウォッチ」として親しまれています。実用上は、GMTとUTCはほぼ同じ意味として扱われることが多く、日常的な時差計算においては区別する必要はありません。
GMTと日本標準時(JST)の時差と関係
日本標準時(JST:Japan Standard Time)は、GMTを基準とした時差で「GMT+9」と表記されます。これは、日本がGMTより9時間進んでいることを意味し、GMTと日本時間との関係を理解する上で重要なポイントです。
GMTと日本での時差を簡単に理解するための具体例として、GMTが午前0時のとき日本時間は午前9時、GMTが正午12時のとき日本時間は午後9時となります。この9時間の時差は、日本が東経135度(明石市)を標準子午線としているためです。
「経度15度につき1時間の時差」という原則により、東経135度÷15度=9時間となります。この関係性を理解することで、海外とのカレンダー調整や会議の日時設定がスムーズになります。
世界のおもな都市とGMT
GMTと「時差」が分かると、あらゆる国の時刻を知ることができます。この基本的な時差を把握しておけば、海外旅行や出張、オンライン会議などの際に、時刻のズレで混乱するリスクを減らすことができます。
以下は、代表的な都市の時差を示した一覧です。
| 都市名 | GMT(UTC)との時差 | 備考(サマータイム) |
|---|---|---|
| ロンドン(イギリス) | GMT(UTC)±0 | 夏はGMT(UTC)+1 |
| パリ(フランス) | GMT(UTC)+1 | 夏はGMT(UTC)+2 |
| ニューヨーク(アメリカ) | GMT(UTC)-5 | 夏はGMT(UTC)-4 |
| 東京(日本) | GMT(UTC)+9 | — |
| ソウル(韓国) | GMT(UTC)+9 | — |
| 北京・シンガポール | GMT(UTC)+8 | — |
| ジャカルタ(インドネシア) | GMT(UTC)+7 | ※国内で複数のタイムゾーンあり |
腕時計のGMT機能とは?仕組みと特徴
腕時計におけるGMT機能とは、複数のタイムゾーン(時間帯)を同時に表示できる機能のことです。この機能により、1つの時計で2つ以上の異なる地域の時刻を同時に確認することができます。
GMT機能は時計の分野では非常に重要な機能で、Apple Watchから機械式時計まで、多くのモデルに搭載されています。GMT機能の主要構成要素は以下のとおりです。
- GMT針(ジーエムティーしん):24時間で文字盤を1周する針。通常は「ホームタイム(自国などの基準時間)」を指し示します。昼夜の判断ができるのも特徴です。
- 回転ベゼル:文字盤の外周にある回転式のリング。GMTモデルでは24時間の目盛りが付いており、第3の時間帯(3か国目)を簡易的に表示できます。
- ローカルタイム:現在自分がいる場所の時刻。海外旅行や出張などで現地の時間に合わせたい場合に、「ローカルタイム」を設定します。
- ホームタイム:普段生活している場所(自国など)の基準時刻。GMT針が指し示す時間帯であり、海外滞在中も常に変わらず確認できるため、家族や本社などとの連絡タイミングを図るのに役立ちます。
GMT機能の基本用語として、ホームタイムは普段住んでいる国/地域の時刻、ローカルタイムは現在滞在している場所の時刻、GMT針は24時間針とも呼ばれる専用の針を指します。この機能により、海外出張や旅行中でも母国の時間を常に把握でき、国際的なビジネスや連絡に非常に便利です。

GMT機能付きの時計には、通常の時針・分針に加え、24時間で1周する「GMT針」が搭載されています。また、「回転ベゼル」と呼ばれる、ケースを縁取るように目盛りが付いたものもあります。
このGMT針や回転ベゼルを使って、「第2のタイムゾーン」や「第3のタイムゾーン」を把握することができるのです。
GMT機能の使い方・設定方法を詳しく解説
GMT機能は複雑に見えますが、基本的な設定手順を理解すれば簡単に使いこなせます。
ここでは、GMTウォッチの具体的な使い方と設定方法を、初心者にもわかりやすく順序立てて解説します。
※注意:ブランドやモデルによって操作方法が異なる場合があります。必ず取扱説明書を確認してください。
ステップ① GMT針と時針の初期同期

リューズを2段引きにして、すべての針(時針・分針・GMT針)を連動させます。
操作手順は以下になります。
- リューズを2段階引く
- GMT針を「24時」の位置に合わせる
- 時針を「0時(12時)」の位置に合わせる
- 上記の状態で両針が同じ時刻を示していれば同期完了となります
ステップ② ホームタイム(母国時間)の設定
リューズを2段引きの状態で、現在のホームタイム(例:日本時間)に合わせます。
設定手順は以下になります。
- リューズ2段引きの状態を維持する
- 分針を回して現在時刻に調整する
- GMT針も連動して正しい時刻が表示されるのを確認
- 日付も同時に正しい日に設定されることを確認
例として、日本時間 午後3時の場合、時針・分針は15:00を表示し、GMT針は24時間表記で15を指します。
この段階で日本標準時とGMTの関係が正しく設定され、日本時間との時差が基準となります。カレンダー機能付きモデルでは日付の切り替わりタイミングも重要です。
ステップ③ローカルタイム(現地時間)の調整
リューズを1段戻して引き、時針だけを動かして現地時間に合わせます。
分針やGMT針は動かず、時針だけが1時間単位で動きます。
④(必要に応じて)回転ベゼルで第3のタイムゾーンを設定
リューズを1段引きにして、時針のみを現地時間に調整します。
調整手順は以下になります。
- リューズを1段引きに調整
- 時針のみが1時間単位で動くことを確認
- 現地時間の時差分だけ時針を回転
- 分針とGMT針は元の位置を維持します。
例として、ニューヨーク滞在時(日本時間-14時間)の場合、日本時間:15:00(GMT針が表示)、ニューヨーク時間:01:00(時針・分針が表示)となります。
これで2つの時間帯が同時に確認可能になります。タイムゾーンの異なる地域でも、時差を意識せずに母国との時間差を把握できます。日付をまたぐ場合のカレンダー表示にも注意しましょう。
ステップ④第3のタイムゾーン設定(回転ベゼル使用)
回転ベゼル付きのGMTモデルでは、3つの時間帯を簡単に管理できます。
設定方法は次の通りです。
- 24時間目盛り付きの回転ベゼルを確認する
- 確認したい第3国との時差分だけ、ベゼルを回転させる
- GMT針をベゼルの目盛りで読み取る
使用例
ニューヨークに滞在中、日本時間に加えてロンドン時間も確認したい場合
- 日本との時差は-9時間
- ベゼルを9時間分(9クリック)逆方向に回転
- GMT針をベゼル目盛りで読み取れば、ロンドン時刻が分かります
この機能により、1本の時計で3つのタイムゾーンを同時に把握可能です。とくにロレックス GMTマスター や オメガの上位モデルでは操作性が優れており、国際的なビジネスシーンで大きな力を発揮します。
実践例:3か国の時間を同時管理する方法
国際的なビジネスシーンでは、複数の国の時刻を把握することが欠かせません。
ここでは、日本のビジネスマンがニューヨーク出張中に、パリの取引先と連絡を取るケースを例に解説します。
各都市の時刻(例)
- 日本(東京):21:00(午後9時)
- ニューヨーク:08:00(午前8時)
- パリ:14:00(午後2時)
設定手順
- ホームタイム:GMT針を日本時間「21:00」に設定
- ローカルタイム:時針・分針をニューヨーク時間「08:00」に調整
- 第3タイムゾーン:回転ベゼルを「-7時間」回してパリ時間を表示
表示結果
- メイン表示(時針・分針):ニューヨーク現地時間 08:00(午前8時)
- GMT針:日本のオフィス時間 21:00(午後9時)
- ベゼル読み:パリの取引先時間 14:00(午後2時)
メリット
この設定により、1本の時計で 現地時間・自国時間・第3国時間 を同時に把握できます。
国際会議や取引先との連絡を効率よく調整でき、カレンダー上での日付のズレも意識しやすくなります。
GMT機能は本当に必要?現代でも需要がある理由
GMT機能はいらないと感じる方も多いかもしれませんが、現代でも多くの場面で重要な役割を果たしています。
Apple Watchをはじめとするスマートウォッチから、ロレックスやオメガなどの機械式時計まで、GMT機能が今なお搭載されるのには理由があります。
瞬時の確認
スマホを操作せずに複数の時間を一目で確認可能。緊急時や会議中でも即座に時差を把握できます。
高い信頼性
電池切れや通信障害の影響を受けにくく、機械式時計であれば半永久的に稼働します。
実用性の高さ
国際電話やオンライン会議の最適なタイミング判断、海外旅行中の本国との連絡管理、さらにはカレンダー上の日付変更を含めた総合的な時間管理が可能です。
現在でもGMT機能を必要とする人々
現代社会では、GMT機能を活用している人々が幅広い職種に存在します。単なる便利機能ではなく、仕事や生活に欠かせない必需品となっているケースも少なくありません。
職業別 GMT機能の活用例
航空・海運関係者
- パイロット、キャビンアテンダント、船舶の航海士、海運業務者
- 複数のタイムゾーンをまたぐ運航・運行管理に活用
国際ビジネス関係者
- 多国籍企業の管理職・営業担当、金融トレーダー(為替・株式市場)
- 国際会議や海外出張の多い職種で必須
特殊環境の従事者
- 軍事・防衛関係者、極地探検家、登山家
- 電波環境が制限される現場での時間把握に活用
医療・緊急対応
- 国際医療支援スタッフ、24時間体制の医療従事者
複数拠点を統括するマネージャー
趣味・ライフスタイル
時計コレクターや機械式時計愛好家
ステータスシンボルとしての所有
このように、航空やビジネスの現場から医療・防衛、さらには趣味の領域に至るまで、GMT機能は多様な人々に利用されています。とくに日時管理やカレンダー調整、時差計算を日常的に行う職種にとって、GMT機能付き腕時計は欠かせないツールといえるでしょう。
代表的なGMTウォッチの例
GMT機能搭載腕時計は多くのブランドから発売されており、それぞれ異なる特徴と魅力を持っています。
ここでは、信頼性・機能性・資産価値の観点から、とくにおすすめの代表的なGMTウォッチをご紹介します。
ロレックス GMTマスターII

ロレックスのGMTといえば、GMT機能付き腕時計の絶対的な王者として君臨する名機、GMTマスターIIです。
おもな特徴としては以下があります。
- 歴史:1950年代のパンアメリカン航空との共同開発
- 機能:独立調整可能なGMT針(ジャンプアワー機能)
- デザイン:象徴的なツートンカラーベゼル
- 素材:ステンレススチール、ゴールド、ツートーンなど
セイコー アストロン

セイコーのGMTといえば、革新的技術の象徴であるアストロンです。
2012年に登場したアストロンは、世界初のGPSソーラーウォッチとして時計史に大きな一歩を刻みました。
アストロンの最大の特長は、GPS衛星からの信号を受信して正確な時刻に自動修正する点にあります。さらに世界39のタイムゾーンに対応し、場所を移動すると自動的に現地時間へ切り替わるため、時差調整の煩わしさを解消してくれます。くわえて太陽光で充電する仕組みを採用しているため、電池交換の必要がなく、長期にわたって安心して使用できるのも魅力です。
こうした機能は、とくに海外出張が多いビジネスパーソンや、複数の国と関わりを持つ方にとって大きな利便性をもたらします。操作は極めてシンプルで、手動による細かい調整を行う必要がありません。加えて、カレンダーや日付も自動で修正されるため、常に正しい情報を示し続けます。日本ブランドならではの高い信頼性と最新技術を兼ね備えたアストロンは、まさに現代のGMTウォッチを代表する存在といえるでしょう。
グランドセイコー スプリングドライブGMT

グランドセイコーのGMTは、世界唯一の独自技術と日本の匠の技を融合させた、最高峰のGMTウォッチです。その心臓部には独自開発の「スプリングドライブ」が搭載されており、ぜんまい駆動の機械式構造とクォーツによる高精度制御を組み合わせることで、1日±1秒という驚異的な精度を実現しています。また、滑らかに流れるように動く秒針は、他の時計にはない独自の美しさを放ちます。
デザインと仕上げにも日本らしい美意識が息づいています。鏡面仕上げは鋭く澄んだ輝きを生み出し、立体的なインデックスは光の反射によって時刻を美しく際立たせます。さらに、熟練職人によるザラツ研磨がケース全体に気品ある輝きを与え、芸術品のような存在感を放っています。
その他の注目GMTウォッチブランド
GMT機能は、多くのブランドが独自の技術やデザインを取り入れながら展開しており、それぞれに異なる魅力を持っています。
まず、オメガの「シーマスター GMT」や「スピードマスター GMT」は、独自のコーアクシャル機構を搭載し、高い耐磁性能と実用性を誇ります。堅牢なつくりと精度の高さで、プロフェッショナルから一般ユーザーまで幅広く支持されています。
次に、パネライの「ラジオミール GMT」や「ルミノール GMT」は、イタリアらしい大胆なデザインが特徴です。大型ケースによる視認性の良さと独特の存在感で、機能性とファッション性を兼ね備えています。
シチズンでは、アテッサシリーズにGMT機能を搭載しています。エコドライブによるソーラー発電で長時間駆動し、軽量かつ丈夫なチタン素材を採用することで、日常からビジネスまで幅広く活躍します。
さらに、Apple WatchもGMT的な役割を果たしています。複数のタイムゾーンを同時に表示できる世界時計機能を備え、デジタルならではの直感的な操作で時差を把握可能です。スマートフォンとの連携により、カレンダーや通知と合わせた効率的な時間管理にも役立ちます。
GMTを理解して時計選びを楽しもう
本記事では、世界標準時としてのGMTの基礎から、腕時計に搭載されたGMT機能の実用性、さらに代表的なブランドモデルまでを解説してきました。
GMTは、国際社会における時間の共通基盤であり、時差を管理するための重要な概念です。そして腕時計のGMT機能は、複数のタイムゾーンを同時に把握できるという実用性を持ちながら、ビジネスや旅行、さらには日常の時間管理に新たな価値を与えてくれます。
ロレックスやセイコー、グランドセイコーをはじめ、オメガ、パネライ、シチズン、さらにはApple Watchまで、各ブランドは独自の技術と美意識でGMT機能を進化させてきました。その多彩なラインナップは、ユーザーひとりひとりのライフスタイルに応じた最適な一本を選ぶ楽しみを広げています。
もし次の時計を探しているなら、GMT機能を備えたモデルを候補に入れてみてください。
参考文献・サイト
米国海軍天文台(USNO):https://www.usno.navy.mil/
Timeanddate.com|世界の時差とUTC・GMT情報:https://www.timeanddate.com/
ロレックス公式サイト(GMTマスターII):https://www.rolex.com/ja/watches/gmt-master-ii.html
セイコー公式サイト(アストロン):https://www.seikowatches.com/jp-ja/products/astron
グランドセイコー公式サイト(スプリングドライブGMT):https://www.grand-seiko.com/jp-ja/worldofgrandseiko/manufacture/9r20th/vol1/index

