
腕時計を手にした時、最初に目がいくのは文字盤やベルトかもしれませんが、実はその外周にある「ベゼル」も非常に重要な役割を担っています。ベゼルは単なる時計の一部ではなく、内部を保護する役割に加え、デザイン面でも大きな影響を与える重要なパーツなのです。では、ベゼルにはどのような機能があり、どんなデザインが存在するのでしょうか?
この記事では、ベゼルの役割や特徴を詳しく解説します。腕時計の奥深い世界を知るために、ぜひご一読ください。
本記事に記載された時計の仕様や用語解説は、一般的な情報に基づいたものです。モデルにより仕様が異なる場合がありますので、詳細は各ブランドの公式情報をご確認ください。
目次
ベゼルとは?腕時計における役割
ベゼル(bezel)とは、英語で「額縁」や「枠」を意味します。腕時計におけるベゼルは、文字盤(ダイヤル)を覆うガラス(風防)の外周部分を指し、ガラスと時計のケースを固定する役割を持っています。しかし、近年の腕時計はデザインの多様化や機能の進化により、ベゼルも独自の進化を遂げています。
たとえばダイバーズウォッチなら「潜水時間」、パイロットウォッチなら「飛行時間」など、ベゼルの目盛りを文字盤の針と組み合わせることで、必要な情報をすばやく確認できる仕組みになっています。
ダイバーズウォッチでは「潜水を始めてから何分経過したか」、パイロットウォッチでは「次の目的地までの所要時間」や「別のタイムゾーンの現在時刻」など、ベゼルの目盛りと針を組み合わせることで、必要な情報を直感的に読み取ることができます。
また、デザイン重視のベゼルも多く、ダイヤモンドやルビーなどの宝石が埋め込まれたモデルも存在します。機能面・デザイン面ともに、ベゼルは腕時計において重要な役割を果たしているのです。
【機能編】ベゼルのおもな種類
ベゼルは、時計のデザイン性を高めるだけでなく、機能面でも重要な役割を果たしています。とくにプロフェッショナル向けの時計では、ベゼルに高度な機能が備わっており、使用目的に応じてさまざまな進化を遂げてきました。
ここでは、代表的な「機能ベゼル」の種類と、それぞれがどのようなシーンで活躍するのかを詳しくご紹介します。
タキメーターベゼル
タキメーターベゼルは、主にクロノグラフ(ストップウォッチ機能付き時計)に搭載されるベゼルです。ベゼル上には「1kmあたりの所要時間」に基づいた平均時速の目盛りが刻まれており、ストップウォッチの針が示す秒数と連動させることで、速度を簡単に算出できます。
たとえば、自動車が1kmを走行するのにかかった秒数を見るだけで、平均時速を瞬時に把握できる便利な機能です。ランナーやドライバーなど、スピードを測定したいシーンで活躍します。
逆回転防止ベゼル
ダイバーズウォッチに欠かせないのが逆回転防止ベゼルです。これは反時計回りにしか回らない構造を持つベゼルで、潜水中の経過時間を正確かつ安全に把握するために設計されています。
潜水開始時にベゼルのゼロ位置を分針に合わせることで、水中での経過時間が一目で分かるようになっています。誤ってベゼルが動いてしまっても「経過時間が短く表示される」ことはなく、安全性が確保されます。
両方向回転ベゼル
両方向回転ベゼルは、その名の通り左右どちらにも回転できるベゼルです。時間計測やカウントダウンなど幅広い用途に対応しており、ダイビングや航空用途に限らず、日常的な時間管理にも役立ちます。
回転方向に制限がないため、使用者の利き手や目的に応じて柔軟に操作できる点も魅力です。
GMTベゼル
GMTベゼルは、2つ以上のタイムゾーンの時刻を同時に確認したい人に最適な機能です。ベゼルは24時間表示になっており、多くは日中と夜間が色分けされています。
GMT針とベゼルを組み合わせることで、現地時間と母国時間を同時に表示可能。海外出張の多いビジネスパーソンや国際線のパイロットにとって、世界をまたぐ時刻管理に重宝されるベゼルです。
インナー回転ベゼル
インナー回転ベゼルは、外側のケースではなく、文字盤の内側に配置された回転式ベゼルです。ケース内にあるため外部の衝撃や汚れに強く、視認性にも優れています。
おもに防水性が求められるダイバーズウォッチや、視認性を重視するパイロットウォッチに採用されており、スポーツと機能性の両立を求めるユーザーに人気です。
カウントダウンベゼル
「カウントダウンベゼル」は、数字が時計回りに小さくなるのが特徴です。ダイバーズウォッチなどのカウントアップ型とは異なり、カウントダウン機能を備えています。
カウントダウンベゼルは、着目すべき瞬間までの残り時間を正確に把握するために使用されます。もともとは軍隊で、作戦までの時間を計測する目的で使われていました。ベゼルには55から0までの数字が5刻みで刻まれており、残り時間を視認しやすくしています。
回転計算尺ベゼル
パイロットが飛行機の速度や燃費、経過時間を計測する際に使用するベゼルです。そのため、ベゼルに刻まれている数字やメモリの間隔は一定ではありません。このベゼルは腕時計に組み込まれた計算尺を活用するもので、ベゼルを回して外側と内側の数字を組み合わせて計算を行うことができます。
リングコマンドベゼル
リングコマンドベゼルは、ロレックスが独自に開発・特許取得した機械連動型の多機能ベゼルです。代表モデル「スカイドゥエラー」では、デュアルタイムとアニュアルカレンダーをベゼルで操作できる画期的な仕組みが採用されています。
このベゼルは単なる目盛りではなく、ムーブメントと連動して特定の機能を切り替える「トリガー」のような役割を果たしており、ロレックスの技術力と革新性を象徴する存在です。
【デザイン編】ベゼルのおもな種類
ここからは、機能ではなくデザイン面で優れているベゼルを紹介します。機能編では用途に合わせて数字が刻まれたベゼルが登場しましたが、ここではベゼルに彫りやアクセサリーを加えることで腕時計をオシャレにしているものが登場します。模様は当然、光の反射を意識しているものもあり、なかには光の反射を抑えたデザインで、機能的な時計の補助を行っているものもあります。
フルーテッドベゼル
リブ状のギザギザの溝が刻まれた装飾的なデザインが特徴のベゼルです。光が当たるとさまざまな方向に反射し、キラキラと輝くのが特徴です。このベゼルは、色味が変わるだけで雰囲気が大きく変わり、シンプルながらも上品なデザインを演出します。
スムースベゼル
ポリッシュ(鏡面)またはサテン(艶なし)仕上げのシンプルなデザインが特徴のベゼルです。多くの時計ブランドで採用されており、万能でスタンダードなベゼルと言えます。シンプルなデザインのため、どんな場面でも誰でも使用しやすいのが魅力です。
エンジンターンドベゼル
ロレックス独自のデザインで、航空機のエンジンやプロペラの回転をイメージしたベゼルです。山型の意匠を連続させるフルーテッドベゼルとは異なり、放射線状に掘られた溝と平面が規則的に組み合わさったデザインが特徴です。オシャレなだけでなく、5分ごとに縦刻みが入ることで視認性の高さも魅力となっています。
エングレーブドベゼル
アンティークロレックスのデイトジャストに多く見られるデザインで、フルーテッドベゼルに似た縦溝彫りのデザインです。主にステンレススチール素材が使用されており、銀色の溝が紳士的でスポーティな印象を与えます。オシャレでありながら使いやすいデザインに仕上がっています。
宝飾ベゼル
バケットダイヤモンド、パヴェダイヤモンド、サファイアなどの天然石が埋め込まれたベゼルです。これにより、高級時計としての価値が一層高まり、エレガントでラグジュアリーな印象を演出します。使用されている宝石の量や色味はデザインによって異なり、カラフルなものもあれば、1つの宝石がアクセントとして使用されることもあります。
モデルによっては、ベゼルだけでなくリューズガードや文字盤にも宝石が使われていることがあります。エレガントな雰囲気を漂わせる時計にぴったりです。
カーボンベゼル
炭素原子(カーボン)が配合された素材を使用したベゼルです。カーボンは軽くて丈夫な特徴があり、自動車や自転車にも使用されています。一般的なベゼルは厚く頑丈にすると重くなりますが、カーボンベゼルはカーボンファイバー素材を使用することで、軽量ながら高い剛性を実現しました。独特の折り目模様がデザインのアクセントになっています。
コインエッジベゼル
コインの縁のような凹凸を模した装飾が施されたベゼルです。このエッジは光の反射を抑える効果があり、他のベゼルの時計よりも文字盤が見やすいという特徴があります。パイロットウォッチやダイバーズウォッチなど、実用性が重視される時計に多く採用されています。回転ベゼルの場合、滑り止めとしての効果もあり、独特の模様は時計にアクセントを加え、存在感を際立たせます。なお、このエッジは手作業で彫刻されることもあります。
ベゼルの名称や役割を理解しておこう
腕時計は機能やデザインが多種多様で、もともとは風防としての役割を果たしていたベゼルにも、さまざまな機能が加わることで進化を遂げてきました。腕時計は装飾品としても重要で、とくに男性にとっては数少ないアクセサリーの一つとして認識されています。そのため、時計の各部品には洗練されたデザインや機能が施されています。ガラスやベルト、もちろんベゼルにもこだわりを持ち、これから高級時計を購入する人は、各パーツをしっかりとチェックすることをおすすめします。
とくにベゼルは、その存在感を発揮する重要な部品です。購入前には、ベゼルの名称や役割、機能、使い方についてよく理解しておきましょう。