
サファイアは非常に古い時代から人と深く関わってきた宝石のひとつです。さまざまな歴史とも複雑に絡み、伝統や王族、聖書といったキーワードともつながっています。「サファイアを購入したい」「身につけたい」と思ったら、ぜひその語源や歴史にも注目してみてください。
この記事では、各地に残されたサファイアの神話や伝説、原産地にまつわる歴史を解説。美しいサファイアに秘められた歴史を紐解いていきます。
本記事に記載されたサファイアの効果・意味合いは、歴史的・文化的背景に基づくものであり、科学的根拠を保証するものではありません。参考情報としてご覧ください。
目次
サファイアの語源
サファイアとは、酸化アルミニウムの結晶である「コランダム」と呼ばれる鉱石のうち、赤以外の色味をした石のことです。ちなみに赤色のコランダムは、ルビーと呼ばれています。ピンクにイエロー、グリーンにパープルと実にさまざまな色合いを楽しませてくれるサファイアですが、その王道はやはり「青」。実はこの鮮やかなブルーがサファイアという名前の由来になったといわれています。
青はラテン語で「sapphirus(サッピールス)」と言います。ギリシャ語では「sappheiros(サピロス)」です。サファイアという言葉は、ここから派生して生まれたとされています。ちなみに和名は「蒼玉/青玉(せいぎょく)」です。どの名前もブルーサファイアの見た目と深く結びついていて、古代より多くの人々を魅了し続けてきた証といえるでしょう。
サファイアの歴史
サファイアは古代より人間にとって非常に重要な意味を持つ石でした。古代ペルシャでは、地球は巨大なサファイアの上に乗っており、空が青いのはその反射によるものだと信じられていました。この伝説は、サファイアをただの宝石ではなく、世界を支える神聖な存在としてとらえた象徴的な神話です。
サファイアは天と地をつなぐ石として崇められ、神々に近づくための神秘的な力を宿すものと考えられていたのです。
また古代ローマの時代から、サファイアは王族にとっても非常に身近な宝石です。英国のチャールズ皇太子がダイアナ妃に贈った婚約指輪がサファイアリングであったことは、世界中で広く知られています。このほかにも、多くのサファイアジュエリーが皇室内で受け継がれており、特別な意味を持つ宝石であることが伝わってきます。
サファイアにまつわる神話・伝説
サファイアは古代から神話や伝説に登場する貴重な宝石であり、多くの文化で神聖視されてきました。
以下ではサファイアに関するいくつかの伝説と歴史的な背景を解説していきます。
古代ペルシャの伝説
古代ペルシャ人は、空が青いのは巨大なサファイアの色合いが反射しているためだと考えていました。この伝説では、サファイアが大空を支える石として描かれており、サファイアに対する神聖な崇拝が表れています。
聖書におけるサファイア
サファイアは聖書にも登場します。「出エジプト記」や「ヨブ記」などに登場し、モーゼに与えられた宝石のひとつとして記されています。聖書では、サファイアは神聖で高貴な石として描かれており、神の目の前にあるものとされることもあります。
キリスト教のシンボル
サファイアはキリスト教においても重要な役割を果たしています。聖パウロの象徴のひとつとしてサファイアが挙げられ、また、聖職者たちが身につけて「天国の象徴」としての意味を持たせていたこともあります。中世では、サファイアが癒やしの力を持つと信じられ、恐ろしい病気を遠ざけてくれるとされました。
古代ローマと王族との関わり
古代ローマ時代から、サファイアは王族や貴族の間で重宝されていました。特にサファイアは持ち主を嫉妬や不幸から守る守護石として信じられていました。英国のチャールズ皇太子がダイアナ妃に贈った婚約指輪に使われたサファイアも有名で、サファイアは王室にとって特別な意味を持つ宝石です。
サファイアとプロテクションの象徴
中世には、サファイアが持ち主を守る力を持つと信じられ、多くの聖職者が身につけていたと伝えられています。また、サファイアは当時、誤解や悪意を遠ざけるお守りとしても使われ、持ち主に精神的な平穏をもたらすと考えられていました。
原産地にまつわる歴史
古代から親しまれてきたサファイアを、もっとも古くから産出してきたのは「スリランカ」だと言われています。産出されたサファイアはインドやヨーロッパへ輸出され、世界中へと広まっていきました。石内部に光の輝きが見えるスターサファイアの多くも、スリランカ産です。
サファイアの原産地の歴史で重要なのは、1881年のカシミール地方でのサファイア採掘です。インドとパキスタンの国境に位置する山岳地域で発見されたのは、「コーンフラワーブルー」と呼ばれるとびきり美しいサファイアでした。イギリス王室御用達のサファイアとしても知られますが、すでに採掘は終了しています。そのぶん希少価値が高く、現在でもプレミアム価格で取引されています。
サファイアの象徴と文化的意義
サファイアはその美しさだけでなく、古くから世界各地で特別な意味を持つ宝石として知られています。王室に愛され、有名人が身につけ、スピリチュアルなアイテムとしても重宝されてきたサファイアは、今もなお多くの人を魅了し続けています。ここでは、サファイアが持つ文化的な価値や象徴的な意味について詳しく見ていきましょう。
イギリス王室におけるサファイアの存在感
サファイアと聞いて、真っ先に思い浮かべるのがイギリス王室の婚約指輪ではないでしょうか。ダイアナ妃が選んだサファイアの指輪は、現在キャサリン妃が愛用していることで知られています。約12カラットの深いブルーのサファイアを中心に、ダイヤモンドが取り巻くデザインは、気品と格調の象徴。サファイアは英国王室の伝統と愛を象徴する宝石として、長年にわたって人々の記憶に残り続けています。
インドでは「幸運をもたらす石」として大切に
インドでは、サファイアは単なる装飾品ではなく、「幸運を呼ぶ石」として宗教的・文化的な価値を持っています。とくにブルーサファイアは、占星術の影響を和らげる石として有名で、「ラーフ・ダシャ」と呼ばれる運勢の変わり目に身につけるとよいとされています。結婚式の贈り物としても人気が高く、繁栄や調和を願う象徴として重宝されています。
有名人やセレブにも愛されるサファイアジュエリー
サファイアは、王室だけでなく世界中のセレブリティにも人気の高い宝石です。オスカー授賞式などのレッドカーペットでは、ブルーサファイアのリングやネックレスがよく見られます。その気品ある輝きは、エレガンスや洗練を象徴し、ファッションのアクセントとしてだけでなく、内面の強さや高貴さを演出するアイテムとして支持されています。
パワーストーンとしてのスピリチュアルな魅力
サファイアには古代からスピリチュアルな力が宿るとされてきました。中世ヨーロッパでは、聖職者が神聖さを保つためにサファイアを身につけていたという記録も残っています。現代では「精神的な安定」や「心の平穏」をもたらすパワーストーンとして親しまれており、ヒーリングや瞑想のお守りに選ばれることも多い宝石です。
サファイアは古代より人々に愛用されていた宝石
サファイアは、その美しい輝きと硬度、そして多彩な色合いから、古代より多くの人々に愛されてきました。歴史的には権力や神聖さの象徴として扱われ、現代においてもジュエリーや時計の装飾として人気があります。
また、サファイアが持つ象徴的な意味合いも、時代を超えて多くの人々の心を惹きつけています。
サファイアの歴史を紐解くことで、その価値が単なる美しさだけでなく、文化的背景や象徴的な意義にも基づいていることがわかります。もし、サファイアを手にする機会があれば、その背景にある豊かな物語に思いを馳せてみてください。
参考文献・サイト
『宝石の文化誌』(ジョージ・フレデリック・クン著)
『パワーストーン百科全書』(八川 シズエ著)
『天然石パワーストーン大事典』(マダム・マーシ著)
『ジュエリーの世界史』(アレックス・ニューマン著)
宝石図鑑(国立科学博物館監修):https://www.kahaku.go.jp/
全国宝石卸商協同組合:https://zho.or.jp/