
アコヤ真珠は、アコヤ貝から採れる高品質な真珠です。繊細な輝きと上品な美しさが特徴で、冠婚葬祭やフォーマルな場にもふさわしい宝石として、古くから親しまれてきました。
この記事では、アコヤ真珠の特徴や歴史、評価基準やアクセサリーの種類、そのほかの真珠との違いなどについて詳しく解説します。
アコヤ真珠とは?
アコヤ真珠は、アコヤ貝(阿古屋貝)から採れる本物の真珠です。アコヤ貝は、ウグイスガイ目ウグイスガイ科に分類される二枚貝の一種で、日本海側では秋田県男鹿半島よりも南、太平洋側では房総半島から南西諸島までの内湾や瀬戸内海に分布しています。
1893年、世界的に知られる日本のジュエリーブランド「MIKIMOTO(ミキモト)」の創始者・御木本幸吉は、世界ではじめてアコヤ真珠の養殖を成功させています。以来、アコヤ貝は養殖に利用される「真珠母貝」のひとつとしても有名となっているのです。
養殖のアコヤ真珠は、アコヤ貝に異物(核)を入れてから約1~2年の時間をかけて育てられます。美しい光沢を持つ真珠ができるまでには、海の環境管理や貝の成長状態への細やかな配慮が欠かせません。こうした手間と技術の積み重ねによって、アコヤ真珠は唯一無二の輝きを放つ宝石へと育っていくのです。
また、ミキモトでは、アコヤ真珠を使ったジュエリーを展開。独自の評価基準で厳格に選び抜かれた最高級品質のアコヤ真珠を「ミキモトパール」とも呼んでいます。さらにミキモトパールをあしらったジュエリーが、皇室御用達の品とされているのではないか、と話題になりました。
アコヤ真珠はジュエリーとしての価値だけでなく、長い歴史や文化とも深く結びついた存在として、人々に親しまれています。ここでは、アコヤ真珠の歴史や産地などについて詳しく紹介します。
本真珠と人工真珠の違い
アコヤ貝から作出されるアコヤ真珠は、本真珠に分類される宝石です。本真珠とは、天然・養殖を問わず、貝そのものから作られる真珠の総称で、人工真珠(イミテーションパール)と区別されています。また、天然の貝で作られる真珠を天然真珠、養殖で作られる真珠を養殖真珠と区別することもあります。
本真珠(天然真珠・養殖真珠)と人工真珠を詳しく知りたい人は、こちらの記事もおすすめです。
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アコヤ真珠の歴史
アコヤ真珠は1000年以上の歴史を持ち、日本では古代から重宝されてきた宝石です。
奈良時代に編纂された日本最古の歴史書『古事記』や日本最古の詩集『万葉集』にも、アコヤ真珠のことだと思われる記述が登場します。当時から天然のアコヤ真珠が産出していたため、奈良の正倉院に伝承されている真珠はアコヤ真珠なのではないか、ともいわれています。
そのほかのアコヤ真珠の簡単な歴史は以下の表の通りです。
年代 | 歴史 |
700年代 | 日本最古の歴史書『古事記』や日本最古の詩集『万葉集』に、アコヤ真珠と思われる記述が登場 |
1298年~1299年頃 | マルコ・ポーロの『東方見聞録』に登場。日本が真珠の産地としてヨーロッパに知られるきっかけとなる |
1893年 | ジュエリーブランドミキモトの創始者である御木本幸吉が世界で初めて真珠の養殖に成功 |
1927年 | アメリカで御木本幸吉とトーマス・エジソンが会見を開く。エジソンが「私の研究所でできなかったものが2つあります。1つはダイヤモンド、いま1つは真珠です。あなたが動物学上から不可能とされていた真珠を発明完成されたことは、世界の驚異です」と称え、「ニューヨーク・タイムズ」紙でも取り上げられたことから、アコヤ真珠が世界的に広まる |
アコヤ真珠の産地
アコヤ真珠の代表的な産地として知られているのが、三重県の伊勢志摩です。
三重県伊勢志摩は、世界で初めて真珠の養殖に成功した御木本幸吉ゆかりの地として知られています。アコヤ真珠の歴史と深い関わりを持つこの地域は、現在でも高い技術力と品質を誇る産地として、国内外から高く評価されています。
また、このほかに愛媛県宇和島や長崎県の壱岐・対馬も代表的なアコヤ真珠の産地として広く知られています。
身近にあるアコヤ貝
アコヤ貝は、アコヤ真珠を生み出す母貝として知られていますが、実は水族館や観光施設などでその姿を身近に見ることができます。
中でも水族館では、アコヤ貝の生態を観察できる展示のほか、自分の手で貝を開き、真珠を取り出す体験プログラムを実施している施設も多く、ネックレスやキーホルダーなどに加工してもらえるサービスも用意されています。
アコヤ真珠の評価基準とランク
アコヤ真珠の良し悪しを見極めるには、評価基準を知っておくことが大切です。ここでは、アコヤ真珠の価値を判断する際に重視される基準やランクの意味を詳しく解説します。
アコヤ真珠の評価基準
アコヤ真珠の品質は、サイズや巻き・照り・キズ・形・色などをもとに評価されますが、もっともわかりやすいのはサイズです。
一般的にアコヤ真珠は約3mm~11mmの大きさで、ネックレスを例にすると、0.5mmごとに価格は30%程度上がります。現在、国内では7mm~8mm台の大きさが主流で、9mm以上は希少です。
アコヤ真珠は、品質によって価値が大きく異なります。評価の際に重視される主な基準は、巻き・照り・キズ・形・色の5つです。
評価項目 | 高評価の特徴 | 低評価の特徴 |
巻き | 真珠層が厚く光沢に深みがある | 真珠層が薄く光沢が浅い・変色しやすい |
照り | 鏡のように輝き周囲が映り込む | くすみがあり輝きが弱い |
キズ | 表面がなめらかでキズがほとんどない | 目立つキズやへこみがある |
形 | 真円に近くバランスが良い | いびつな形(個性的な魅力と捉えるケースもある) |
色 | ホワイト・ピンク・希少色 | くすみや濁りのある色 |
以下では、それぞれの基準について紹介します。
巻き
「巻き」とは、真珠の核を覆っている真珠層の厚さを指します。真珠層が厚いものほど耐久性があり、奥行きのある輝きが生まれます。いっぽう、真珠層が薄いと光沢に深みがなく変色しやすくなるため、評価は低くなります。
照り
「照り」とは、真珠の表面に現れる光沢や輝きの強さを指します。周囲の景色が鏡のようにくっきり映り込むほど「照りが良い」とされ、高い評価を受けます。反対に、表面がくすんでいたり、光沢がぼんやりしているものは「照りが弱い」とされ、評価は低くなります。
キズ
真珠は自然の産物であるため、表面に小さな「キズ」や「へこみ」があることも珍しくありません。キズが少ないほど見た目が美しく、評価が高くなります。キズが目立つ場合は、たとえほかの評価がよくても総合的な価値が下がることがあります。
形
アコヤ真珠では、丸く整った「ラウンド型」が最も高く評価されます。そのほかにも、楕円形やしずく型、いびつな形の「バロック型」など、さまざまな形がありますが、これらはデザインや用途、そして個人の好みによって評価が分かれます。
色
アコヤ真珠には、ホワイト、クリーム、ピンク、シルバーなど、さまざまな色があります。なかでも、肌なじみがよくて上品な印象を与える「ホワイト系」や「ピンク系」は特に人気です。また、「ブルー系」や「シルバーブルー系」といった希少な色の真珠もあり、市場では高い価値がつく傾向があります。
アコヤ真珠のランク
アコヤ真珠に統一されたランク付けはなく、販売会社や鑑定機関によって基準は異なります。
たとえば、日本を代表する鑑定機関のひとつである「真珠科学研究所」では、「天女」や「花珠」などの名称を用いた格付けが行われています。以下は、真珠科学研究所が設けているアコヤ真珠の評価基準です。
特別称号 | サイズ | 実体色 | 評価 |
天女(てんにょ) | 6mm以上 | ホワイト系 | 最高品質 |
花珠(はなだま) | 6mm以上 | ホワイト系 | 最高品質 |
真多麻(まだま) | 6mm以上 | ブルー系 | 最高品質 |
彩凛珠(さいりんだま) | 6mm未満 | ホワイト系 | 最高品質 |
彩雲珠(さいうんだま) | 6mm未満 | ブルー系 | 最高品質 |
金色 | –– | ゴールド系 | 最高品質 |
アコヤクイーン | –– | そのほか | 最高品質 |
Rose Premium | –– | ホワイト系 | テリ最強 |
Rose | –– | ブルー系以外 | テリ最強 |
Blue Rose | –– | ブルー系 | テリ最強 |
※出典:真珠科学研究所「真珠鑑別・品質分析」
いっぽう、一部の販売店では独自に「特選」「プレミアム」などのランクを設けている場合もあります。そのため、購入時には表示されているランクだけでなく、評価基準や鑑別書の有無も確認することが大切です。
アコヤ真珠を使用したアクセサリーと値段
アコヤ真珠は、その繊細な美しさから、さまざまなジュエリーアイテムに用いられています。一粒あたりの相場は品質やサイズによって異なりますが、数千円から数万円程度が一般的です。
ここでは、アコヤ真珠を使用した代表的なアクセサリーと、その特徴や価格帯について解説します。
ネックレス
アコヤ真珠が一周あしらわれたネックレスは、控えめで上品な輝きが魅力で、冠婚葬祭からカジュアルまで幅広いシーンで活躍します。使用される真珠の大きさは8mm前後が主流で、粒が大きいほど希少価値が高いです。
長さは首元に収まりやすい約40cm~45cmの「プリンセス丈」がもっともスタンダードで、重ね付けやアレンジを楽しめる50cm以上のロングタイプも人気です。
価格は真珠の品質や大きさ、ネックレスの長さによって異なりますが、約5万〜10万円の価格帯が人気です。「花珠真珠」など高品質なものは、数十万~数百万円することもあります。
ペンダント・一粒ネックレス
アコヤ真珠を使ったペンダントや一粒ネックレスは、シンプルなものから、ほかの宝石と組み合わさった華やかなデザインのものまで、多彩なバリエーションがあります。中でも一粒ネックレスは真珠の美しさを引き立てる洗練されたスタイルで、普段使いやビジネスシーンにもなじみやすいのが特徴です。
また、複数の真珠や宝石を組み合わせたペンダントは、特別な日の装いにもぴったり。デザインの幅が広く、好みやシーンに合わせて選べるのも魅力のひとつです。
真珠の大きさは、7.5mm~8mmだとさりげないポイントに、8.5mm~9mmだとエレガントで存在感が生まれます。価格は数千円~数万円台と比較的手頃です。品質やサイズ、デザインによっては数十万円以上するものもあります。
ピアス・イヤリング
アコヤ真珠のピアスやイヤリングは、耳元に自然なエレガントさを添えてくれるアイテムとして人気があります。
真珠のサイズは7〜8mmが主流で、冠婚葬祭や入学式など幅広いシーンで使えるアイテムです。また、揺れるタイプや装飾をあしらったデザイン性の高いものも多く、装いに応じてスタイルを変えられる点も魅力といえます。
ネックレスやペンダントと同様に、価格は品質によってさまざまです。安いものは数千円台から、高いものは5万円以上となるケースも珍しくありません。
指輪
指先に高貴な輝きを添えるアコヤ真珠の指輪は、長く愛用できるジュエリーとして、多くの人に選ばれています。シンプルな一粒タイプは普段使いにもなじみやすく、複数の真珠や宝石をあしらったデザインはパーティーなど華やかさを演出したい場面にも最適です。
使用される真珠のサイズは8mm前後が多く、粒の大きさや配置によって印象が大きく変わります。価格帯は1万円台から30万円以上まで幅広く、真珠の品質やリングの素材、デザインによって異なります。
アコヤ真珠とそのほか本真珠の違い
世界には、南洋真珠や黒蝶真珠、マベ真珠など、多彩な真珠が存在します。それぞれの真珠は、形状や色味、サイズなどに違いがあり、希少性や価値も異なります。
本真珠の種類 | 貝の種類 | おもなサイズ | 特徴 |
アコヤ真珠 | アコヤ貝 | 約3~11mm | 深い光沢があり、小ぶりで日本人の肌になじみやすい |
南洋真珠 | 白蝶貝 | 約10mm以上 | 大粒でふくよかな輝きがある |
黒蝶真珠 | 黒蝶貝 | 約8mm~13mm以上 | ブラックやグリーンなど深い色味が特徴 |
マベ真珠 | マベ貝 | 約10mm以上 | シャボン玉のような虹色の輝きがある |
コンクパール | ピンク貝 | 約5mm~10mm以上 | 独特のフレイム模様がある |
淡水パール | 池蝶貝 | 約2mm~20mm | ユニークな形状が多く、カラーバリエーションも豊富 |
ここでは、アコヤ真珠とそのほかの本真珠との違いを比較し、紹介します。
アコヤ真珠と南洋真珠(白蝶貝)の違い
南洋真珠は、熱帯地域に生息する白蝶貝を母貝とし、10mm以上の大粒でふくよかな輝きが特徴の真珠です。シルバーやゴールドなどカラーバリエーションも豊富で、高級感のある見た目が魅力とされています。
アコヤ真珠に比べると粒が大きく重厚感があり、産出量も少ないため、一般的に高級品として扱われることの多い真珠です。
アコヤ真珠と黒蝶真珠(黒蝶貝)の違い
黒蝶真珠は、温暖な海に生息する黒蝶貝を母貝とする真珠です。重厚な存在感と深みのある色味が特徴で、ブラック系やグリーン系、レッド系などのカラーがあり、光の加減によって多彩な色彩を楽しめる点も魅力とされています。
アコヤ真珠と比べて粒が大きく色も濃い黒蝶真珠は、力強く華やかな印象を与えてくれます。中でもピーコックグリーンと呼ばれるものは希少性が高く、価値のある真珠として知られています。
アコヤ真珠とマベ真珠(マベ貝)の違い
マベ真珠は、マベ貝から採れる半球状の真珠で、片面が平らな形状となっています。おもに奄美大島やフィリピンなどで養殖されており、サイズは10mm以上と比較的大粒です。シャボン玉のように、ピンクやブルー、グリーンなどが混ざり合った干渉色が魅力。
ペンダントやブローチなど、片面が見えるデザインのアクセサリーによく用いられます。独特の美しさを持つマベ真珠ですが、一般的には、形状や希少性、用途の広さから、アコヤ真珠のほうが高級とされています。
アコヤ真珠とコンクパール(ピンク貝)の違い
コンクパールは、カリブ海などに生息するピンク貝から自然に生まれる天然真珠で、淡いピンク色や「フレイム(火炎)模様」と呼ばれる独特の光沢が特徴です。
アコヤ真珠とは異なり養殖が難しく、希少性が非常に高いため、市場価格の面でもコンクパールの方が高級とされています。
アコヤ真珠と淡水パール(池蝶貝)の違い
淡水パールは、池蝶貝を母貝とし、おもに中国で盛んに養殖されています。核を入れずに形成されるため、球体ではなくユニークな形状が多く、カラーバリエーションも豊富です。
アコヤ真珠が照りや形の美しさを重視するのに対し、淡水パールは手ごろな価格が魅力。希少性や品質の面では、一般的にアコヤ真珠の方が高級とされています。
アコヤ真珠の魅力を知って特別な「一粒」を選ぼう
アコヤ真珠は、繊細な輝きと奥ゆかしい美しさを持つ、日本を代表する真珠です。品質によって価値が大きく異なるため、購入をする際には、巻き・照り・キズなどの評価ポイントをしっかり確認しましょう。
また、ネックレスやピアスなど、用途に合わせた選び方ができるのも持ち味のひとつ。こちらの記事でご紹介した内容を参考にしていただき、自分にぴったりの「一粒」を見つけてみてください。
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参考文献
愛媛県庁HP/国立公文書館|公文書にみる発明のチカラ/中央宝石研究所|CGL通信/正倉院|宝物について|礼服御冠残欠 第1層/THE NIKKEI MAGAZINE/宇和島イノウエパール公式HP/真珠科学研究所|コラム|真珠鑑別・品質分析