
ダイヤモンドがどの国で多く採れるか、ご存じですか?その美しさから「永遠の象徴」とされるダイヤモンドは、ジュエリーや婚約指輪として世界中で愛されています。しかし、私たちの手元に届くその輝きが、どの国の地中から掘り出されているのかまで意識することは、あまりないかもしれません。
本記事では、世界の主要なダイヤモンド産出国とその特徴、各国の情勢が市場に与える影響などをわかりやすく解説します。
また、日本での産出可能性や、産地を知ることで得られる選び方のポイントについても紹介しています。
ダイヤモンドの「価値」は、その産地と深く結びついています。購入や売却を検討中の方はもちろん、鉱物の背景に関心がある方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
本記事に記載されたデータ・傾向は、複数の業界レポートや公的機関による情報をもとに編集・推定されたものです。市場環境や国際情勢により変動する可能性があるため、参考情報としてご覧ください。
目次
ダイヤモンドの産出国ランキングTOP5
世界のダイヤモンド供給は、少数の主要産出国によって支えられています。ここでは、2024年時点での最新データをもとに、主要な産出国とその特徴を紹介します。
順位 | 国名 | 産出量(百万ct) | 世界シェア(%) |
---|---|---|---|
1位 | ロシア | 37.3 | 約33% |
2位 | ボツワナ | 25.1 | 約22% |
3位 | カナダ | 16.0 | 約14% |
4位 | アンゴラ | 9.8 | 約9% |
5位 | コンゴ民主共和国 | 8.3 | 約7% |
※データソースと算出基準について(USGS等)
本ランキングは、アメリカ地質調査所(USGS)の「Mineral Commodity Summaries 2024」や、キンバリープロセス認証制度(KPCS)など、信頼性の高い統計データを基にしています。産出量は主に年間の総カラット数を基準としており、天然ダイヤモンドに限ったデータに基づいています。
1位:ロシア
産出量:約37.3百万カラット
世界シェア:約33%
主な採掘地:ウダーチナヤ鉱山、ミール鉱山、ジュビリー鉱山など
世界最大のダイヤモンド産出国で、とくにシベリアのヤクーチア地方には非常に豊富なキンバーライト鉱床が広がっています。国営企業「ALROSA」が大規模に採掘を行っており、未開発資源も多く残されています。
ただし、ウクライナ侵攻以降は欧米諸国からの経済制裁により、国際市場での流通が不透明化し、一部の国ではロシア産ダイヤモンドの取り扱いを停止する動きも見られます。政治的リスクが価格や供給安定性に影響を与える重要な国のひとつです。
2位:ボツワナ
産出量:約25.1百万カラット
世界シェア:約22%
主な採掘地:ジュワネング鉱山、オラパ鉱山など
世界で最もエシカルなダイヤモンド生産国のひとつとして知られており、経済の柱でもあります。政府とデビアス社の合弁事業「Debswana(デブスワナ)」が採掘を担い、国家の税収の大部分を鉱業が支えています。政治的にも比較的安定しており、サプライチェーンの信頼性が高い国です。
3位:カナダ
産出量:約16.0百万カラット
世界シェア:約14%
主な採掘地:ダイアヴィック鉱山、ゴーシャンク鉱山など
世界的に見ても採掘の透明性と環境意識の高さが際立っている国です。先住民族との協定や環境保護基準の厳格さから、トレーサビリティとエシカルな採掘が徹底されています。極寒地域での採掘には高度な技術が求められ、産出コストは高めですが、信頼性の高さから市場で高評価を得ています。
4位:アンゴラ
産出量:約9.8百万カラット
世界シェア:約9%
主な採掘地:カツオカ鉱山、ルオ鉱山など
アンゴラのダイヤモンドは比較的大粒で高品質な宝飾用が多く、近年では民間資本や外資企業の進出により採掘体制が拡充しています。長らく内戦による混乱が続いていましたが、現在は経済再建とともに鉱業も強化されており、将来性のある産出国のひとつとして注目されています。
5位:コンゴ民主共和国(DRC)
産出量:約8.3百万カラット
世界シェア:約7%
主な採掘地:ムブジマイ、キサンガニ周辺など
圧倒的な埋蔵量を誇りながらも、その多くが産業用として利用されています。手掘りによる小規模採掘が主流であり、労働環境や児童労働などの問題が国際的な懸念材料となっています。キンバリープロセスへの対応や透明性の改善が求められており、倫理的観点から評価が分かれる産出国です。
主要5か国以外で注目されるダイヤモンド産出国
ダイヤモンドの産出はロシアやボツワナなどの主要国に集中していますが、実はそのほかにも独自の特徴をもつ産出国がいくつか存在します。ここでは、海底鉱山で知られるナミビアや、豊富な埋蔵量と倫理課題の両面をもつジンバブエなど、主要5か国以外で注目される産地をご紹介します。
今後の採掘体制に注目が集まるナミビア・ジンバブエ
ナミビアは、海底鉱山からの採掘が特徴的な国です。デビアス社との合弁会社「ナミデブ(Namdeb)」が運営する海底採掘によって、高品質なダイヤモンドが持続的に供給されています。陸上資源の減少に伴い、今後も海底資源の活用が鍵となるでしょう。
ジンバブエは、長年政治不安や不正な採掘問題が報じられてきましたが、マランゲ鉱山など豊富な鉱脈を有する国でもあります。キンバリープロセスへの再参加後は、合法的な輸出が再開されており、国際市場での信頼回復が進んでいます。ただし、透明性や人権問題への対応が課題とされています。
かつて世界をリードしたブラジル・オーストラリア
ブラジルは、18世紀に世界最大のダイヤモンド産出国だった歴史を持ちます。現在では産出量は大きく減少したものの、少量ながらも高品質なダイヤモンドが採掘されています。また、鉱山周辺の環境保護活動と両立しながらの小規模採掘が進められており、エシカルな面での注目も集まっています。
オーストラリアは、かつて世界有数の産出国として知られており、とくに「アーガイル鉱山」はピンクダイヤモンドの一大供給地でした。しかし、アーガイル鉱山は2020年に閉山しており、現在は産出量が大幅に減少しています。ただし、地質学的に未開発の可能性が残されており、今後の探査や新鉱床の発見が期待されています。
これらの国々は、いずれも「量」だけでなく「質」や「特殊な採掘方法」、「倫理性」など多様な観点から評価されています。主要国以外の動向も把握することで、ダイヤモンド市場の全体像をより立体的に理解することができるでしょう。
ダイヤモンドが生成・採掘できる条件とは?
ダイヤモンドはどこでも手に入るわけではありません。その希少性の裏には、地球のごく限られた場所でしか起きない“奇跡の地質条件”が隠されています。
では、ダイヤモンドはどのようにして生まれ、どんな条件を満たせば採掘できるのでしょうか?まずはその誕生のプロセスから紐解いていきましょう。
ダイヤモンドはどこで生まれる?
ダイヤモンドのもとは、地球の奥深く地下150〜200kmのマントル層にあります。そこは、数千度の高温と巨大な圧力がかかる極限の世界。こうした環境下で炭素が結晶化し、長い年月をかけてダイヤモンドへと変化していくのです。
しかし、それだけでは私たちの手に届きません。生成されたダイヤモンドは、火山活動によってマグマとともに地表近くへ押し上げられ、「キンバーライト」と呼ばれる特殊な火成岩に包まれて存在します。これが、ダイヤモンド鉱床=キンバーライトパイプです。
実際に私たちが採掘するダイヤモンドのほとんどは、このキンバーライトの中に眠っています。つまり、「キンバーライトがある場所」が、そのまま「ダイヤモンドの採れる場所」になるのです。
採掘できる場所が限られる理由とは
地球には広大な陸地が広がっていますが、実際にダイヤモンドを採掘できる場所はほんの一握りしかありません。
その理由は、キンバーライトが形成されるには「クラトン」と呼ばれる安定した古代の大陸地殻が必要だからです。クラトンは非常に古い地質構造で、アフリカ、ロシア、カナダなど、限られた地域にしか存在していません。
さらに、キンバーライトがあっても必ずダイヤモンドが含まれているとは限らず、経済キンバーライト的に採算が取れるほどの鉱量がある場所はごく一部。結果として、世界のダイヤモンド産出量のほとんどが、数か国に集中しているのです。
日本でダイヤモンドは採れる?
日本列島は、地質活動が活発な「新しい地殻」の上に位置しているため、基本的にはダイヤモンドの産出には適していないとされてきました。
しかし2007年、愛媛県の四国山地でごく微細な天然ダイヤモンドが発見され、地質学界に衝撃を与えました。発見されたのは約0.001mmという極小サイズの結晶ですが、日本にもダイヤモンド生成の痕跡があることを示す貴重な証拠となりました。
現段階では商業採掘に至るような鉱床は確認されていませんが、今後の探査技術の発展や新たな研究成果によって、将来的に「日本産ダイヤモンド」が話題になる日が来るかもしれません。
産出国の情勢がダイヤモンド価格に与える影響
ダイヤモンドの価格は、単に供給量と需要のバランスだけでなく、主要産出国の政策・経済状況・地政学リスクなど、複数の外部要因によって大きく左右されます。
ここでは、各国の情勢がどのようにダイヤモンド市場に影響を及ぼしているのかを詳しく見ていきましょう。
主要国の政策・経済動向と市場への波及
ダイヤモンド産出国の多くは、鉱業が経済の中心を担っています。そのため、各国の政策や経済状況が市場に与える影響は非常に大きく、価格変動の一因となっています。
たとえば、ボツワナでは政府とデビアス社のパートナーシップを通じて安定的な供給が行われており、価格の安定に貢献しています。いっぽうで、ロシアはウクライナ侵攻以降、欧米諸国からの経済制裁の影響を受け、ロシア産ダイヤモンドの流通をめぐる不透明感が高まっています。このような政治的リスクは、市場の不安定化や価格高騰を招く要因になります。
また、経済が不安定な国では、インフラ整備や労働環境の悪化によって採掘効率が下がり、供給減少につながることもあります。こうした要因は、間接的に国際価格に反映されることが多いです。
新鉱床の開発や採掘規制の影響
近年、新たな鉱床の発見や採掘技術の進展により、一部の国ではダイヤモンドの供給量が増加しています。たとえば、アンゴラでは外資参入が進み、未開発地域での探査が活発化しています。新鉱床の開発が進めば、市場への供給が増え、価格の安定や下落要因となる可能性もあります。
いっぽうで、環境規制や人権問題への対応強化によって、ナミビアやカナダなどでは採掘条件が厳しくなり、生産コストの上昇や供給制限が懸念されています。とくに海底採掘や極地鉱山では、環境保全と鉱業の両立が課題となっており、規制の強化が供給に影響を及ぼす局面も増えつつあります。
このように、新鉱床の開発と規制の強化は、市場供給量の変動要因として常に注視すべきテーマです。
地政学リスクと今後の需給見通し
地政学リスクは、ダイヤモンド市場の不確実性を高める大きな要因です。とくにロシア、ジンバブエ、コンゴ民主共和国などでは、政情不安や国際的な制裁、紛争などが採掘・輸出入の継続に影を落とすことがあります。
ロシアに対する制裁により、G7諸国では「非ロシア産ダイヤモンド」の需要が高まっており、ボツワナやカナダなど他国の価格上昇を引き起こしています。いっぽう、ジンバブエなどでは倫理的な調達に対する懸念が残り、供給があっても市場評価にばらつきが出るケースもあります。
今後の需給バランスは、以下の3つに大きく左右されると見られています。
- 新たな産出国の開発進展
- エシカルダイヤモンドの需要拡大
- 世界経済の動向と投資対象としての注目度
これらの要因が絡み合うことで、今後もダイヤモンドの価格は変動する可能性が高く、産出国の情勢を注視することは非常に重要です。
ダイヤモンドの産出国を知ることがなぜ大切なのか?
ダイヤモンドを選ぶ際、輝きやデザインだけに注目してしまいがちですが、実は「どこの国で産出されたか」も非常に重要な要素のひとつです。なぜなら、産出国はそのダイヤモンドの品質や希少性、さらには価格や将来的な資産価値にも深く関係しているからです。
ここでは、産出国を意識することで得られる理解や、実際の購入・売却時に役立つポイントについて見ていきましょう。
価格・価値・背景にあるストーリーの理解
ダイヤモンドの価格や価値は、単に「カラット数」や「透明度」だけで決まるものではありません。実際には、その石がどこの国でどのような経緯で採掘されたのかといった「ストーリー」も大きく関係しています。
例えば、ボツワナやカナダのように倫理的配慮のもと採掘されている国のダイヤモンドは、エシカル価値が高く、市場でも信頼されています。いっぽうで、過去に紛争ダイヤモンドの問題を抱えていた地域では、同じ品質でも価格が下がることもあるのです。
また特定の鉱山から採れた有名なダイヤモンドには、ブランドや歴史的価値が加わることもあります。こうした背景を知ることで、ダイヤモンドが単なる「鉱物」ではなく、「文化的・経済的な価値を持つ資産」であることが見えてきます。
購入・売却時に役立つ知識として
ダイヤモンドを選ぶとき、産出国の知識があるかどうかで判断力に大きな差が生まれます。例えば、「どの国のダイヤモンドが将来的に価値が上がりやすいのか」「どの国の石はエシカル面で安心なのか」といった情報は、購入の判断材料となるだけでなく、売却時にも高評価を得やすいポイントになります。
また、査定の際にも、産地が明記されているダイヤモンドは信頼性が高く、価格交渉でも有利になるケースがあります。信頼できる産出国から来た石であることを証明できれば、ジュエリーとしての価値だけでなく、投資対象としての価値も高まるのです。
このように、「産出国を知る」というのは、ダイヤモンドをより深く理解し、正しく評価するための基本的な知識なのです。
信頼できる産出国を見極めて納得のいく選択を
ダイヤモンドの価値は、その輝きやデザインだけでなく、「どこで・どのように」採掘されたかという背景にも大きく左右されます。とくに近年は、エシカルな採掘やトレーサビリティへの関心が高まり、産出国による市場評価の違いも見逃せません。
ただし、一般的な鑑定ではダイヤモンドの正確な産地まで特定するのは困難です。GIAなどの国際鑑定機関でも、評価対象はあくまで「4C」であり、産地は明記されないのが通常です。そのため、「どこの国で採れたか」を知るには、流通経路の情報やトレーサビリティ付きの証明書が不可欠です。
とはいえ、産地情報がなくても、ダイヤモンドの価値は購入時の背景や現在の市場動向などをふまえて、総合的に判断することができます。
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参考文献・サイト
USGS「Mineral Commodity Summaries 2025」:https://pubs.usgs.gov/publication/mcs2025
Kimberley Process Statistics(統計ページ):https://kimberleyprocessstatistics.org/public_statistics
De Beers Group(公式ニュースページ):https://www.debeersgroup.com/media/company-news