原油価格と金価格に関係性はある?金を高く売るために見たい指標

原油価格と金価格は「同じ方向に動きやすい」と語られてきました。かつては、「原油が上がればインフレ懸念が高まり、安全資産として金が買われる」そんなパターンが比較的わかりやすく見られた時期もあります。

しかし、世界経済の構造が大きく変化する中で原油と金の相関は明確とはいい切れなくなり、逆に動く場面も増えました。

そこでこの記事では、原油価格と金価格の関係を解説。また、原油の値動きだけで金価格を読むことはできるのか、今の市場で何を見れば判断できるのかについても解説します。

※本記事に記載された将来の価格見通しや市場動向は、複数の業界レポートや公開情報をもとに編集・推定したものであり、いかなる投資判断を保証するものではありません。売買はご自身の判断と責任において行ってください。
※本記事は価格動向の整理と判断材料の提示を目的としたものであり、特定の売買行動を推奨するものではありません。

原油価格と金価格はかつて相関関係にあった!

原油価格と金価格には、かつて相関関係が見られていました。

とくに2014年頃までは両者が似た方向に動く場面が多く、世界経済の変化に対して共通した反応を示す傾向があったのです。

当時、相関が生まれやすかった理由には、次のような要因が挙げられます。

  • どちらもドル建て取引されるため、米ドルの変動に影響を受けやすい
  • 中東の情勢不安で、原油は供給懸念から価格高騰、金は地政学リスクの高まりで価格高騰
  • 世界経済の拡大に伴って原油価格の高騰→インフレーションの懸念から安全資産として金が買われる→結果、価格が連動していた

しかし、2014年以降は状況が変化しました。シェール革命による供給構造の変化や、市場参加者の広がりなどが影響し、相関関係は見られにくくなったのです。

とくに2020年のコロナショックや2025年の金価格高騰では、金価格が上がるいっぽうで、原油が下がる“逆相関関係”に。以前のような価格連動は不安定化しています。


原油価格と金価格の関係が変化!相関が不安定化した5つの理由とは?

2014年以降、原油価格と金価格の関係には大きな変化が見られています。

以前は為替やインフレ懸念といった共通の要因で連動しやすい状況がありましたが、その特徴が徐々に薄れ、逆方向へ動く局面が出やすくなりました。

ここでは、原油価格と金価格の相関が不安定化した5つの理由を解説します。

①アメリカのシェール革命

アメリカのシェール革命は、原油と金の相関が不安定化した大きな要因のひとつとされています。

従来の原油よりも深い地層にある頁岩(シェール)に含まれるシェールオイルは、採掘コストや技術不足により、開発が困難とされていました。

しかし、2010年代前半に原油の水平掘削や水圧破砕といった技術革新が進み、シェール層からの採掘コストが大きく下がったのです。この変化により、アメリカを中心に原油生産・開発が拡大。2018年にはアメリカが世界一の原油生産国となりました。

このシェール革命によって原油の供給量が増え、原油価格に下落圧力がかかる場面が増えたのです。

従来は、原油価格が上がるとインフレ懸念が高まり、インフレに強い資産として金も買われる傾向がありました。しかし、シェール革命で原油価格が安定・下落しやすくなり、この連動関係が弱まったのです。

参考文献:第1節 米国の「シェール革命」による変化|経済産業省

②原油価格の急落とOPECによる価格調整

そして2014年、世界の原油市場は大きな転換点を迎えました。

上記で解説したシェール革命によって供給過剰が深刻化したことで、原油価格が大きく下落。とくに2014年の6月から12月にかけてはOPEC(石油輸出国機構)が減産を見送った影響もあり、原油価格が急落しました。

本来、OPECは供給調整によって価格安定を図る役割を担ってきましたが、2014年11月の総会では減産を見送る判断を行い、自国の市場シェア維持を優先したとみられています。

こうした原油価格の急落と供給構造の変化は、金との関係にも影響を与えました。原油安によってインフレ圧力が弱まったことで、金が持つ「インフレヘッジ」としての需要が相対的に高まりにくくなったのです。

その結果、金価格は原油価格よりも、実質金利や各国の金融政策といった別の要因に左右されやすくなり、従来の「原油高→金高」というパターンが崩れました。相関は以前より不安定になり、動きが読みづらい局面が増えたのです。

用語解説
OPEC(石油輸出国機構):「Organization of the Petroleum Exporting Countries」の略。主要産油国が自国の利益を守り、原油の供給調整と価格安定を目指すために設立した国際機関のこと。

③世界的な新型コロナウイルスの流行

2020年、新型コロナウイルスの世界的な流行により各国でロックダウンが行われ、経済活動が急速に停滞しました。

その影響で航空機や自動車、工場での原油需要が一気に落ち込み、2020年4月にはWTI原油先物価格が一時マイナス圏に突入するという前例のない状況が生まれました。

いっぽうで、市場が不安定になるなか「安全資産」とされる金には資金が集まる流れに。金関連ETFには過去最大規模の資金流入が確認され、金価格はコロナ禍の初期から上昇しました。

このコロナショックで「原油は急落・金は上昇」という形で逆相関関係が、はっきりと表れました

④脱炭素で長期的な石油需要が減少

近年は気候変動対策の強化を背景に、世界的な「脱炭素」の動きが広がっています。

各国政府や企業が温室効果ガス削減を目標に掲げ、再生可能エネルギーの導入や電気自動車の普及が進んだことで、長期的には石油への依存度が徐々に下がっていくとの見方が広まりつつあります。

IEA(国際エネルギー機関)の長期見通しでも、脱炭素が進むシナリオでは世界の石油需要の伸びが鈍化し、将来的に需要が減少へ向かう可能性が示されているのです。

いっぽうで、当面は新興国の経済成長などにより一定の需要が残ると見込まれていますが、「長期的には石油需要が頭打ちになり、減少するリスクがある」という認識が市場では意識されはじめています。

こうした将来予想や期待、不安が原油価格の評価や変動に影響を与え、安全資産といわれる金との関係にも変化をもたらしていると考えられます。

用語解説
IEA(国際エネルギー機関):1974年、第1次石油危機を受けて設立した国際機関。エネルギー安全保障の確保(Energy Security)、環境保護(Environmental awareness)、経済成長(Economic development)、世界的なエンゲージメント(Engagement worldwide)の「4つのE」を目標に掲げている。

⑤イランの経済制裁解除

2015年にイランと主要6か国が核合意(JCPOA)に達し、2016年からは国連などによる対イラン制裁が段階的に解除されました。

その結果、イランの原油生産と輸出が再開され、原油やコンデンセートの輸出量は大きく増加。2018年春には制裁前の水準に近いところまで回復し、世界全体の供給量が押し上げられたことで、原油価格に下押し圧力を与えました。

しかし2018年5月、米国がJCPOAから一方的に離脱を表明し、同年11月には対イラン制裁を段階的に再開しました。これにより、イランの原油輸出や金融取引は再び制約を受けることとなり、せっかく回復した供給増加の流れは短期間で終わりを迎えたのです。

用語解説
コンデンセート:天然ガスを採取する際に採取される軽質な油のこと。地下では気体の状態、地上では凝縮した液体になる。

【結論】2026年現在原油価格で金価格を予想するのは難しい

2026年現在は、原油価格で金価格を予測するのは非常に困難です。

これまで紹介してきたように、かつては原油価格と金価格は連動する場面が多くありましたが、シェール革命や世界情勢などにより逆相関の動きを見せるようになりました。

現在の金価格は、金融政策や実質金利、地政学リスクといった要因の影響をより強く受ける場面が多く、原油価格の動きだけで金の方向性を判断するのは難しいとされています。

このように、2026年の時点では原油から金価格を予測することは簡単ではなく、多角的な指標を踏まえて判断する必要があるといえます。


金価格を動かす“本当の原因”とは?原油より重要な指標

原油だけでは金価格を読み解けないとすれば、次に知りたいのは「では何を基準に金の動きをつかめばいいのか」という点でしょう。

ここでは、金価格を左右する主要な指標や売り時・買い時を判断するうえで押さえておきたい視点について詳しく解説します。

実質金利

金価格を考えるうえで、重要な指標のひとつが「実質金利」です。

実質金利とは、名目金利からインフレ率(物価上昇率)を差し引いた数値のこと。名目金利が上昇すると、利息のつかない金よりも国債や預金の魅力が高まりやすくなり、金価格の重しになる傾向があります。

いっぽうで、名目金利が低下したり、インフレ率が高まったりして実質金利が低くなる局面では、「利回りがなくても資産価値が目減りしにくい」と考える投資家が増え、金に資金が流れやすくなるでしょう。

米国の長期金利と金価格の推移を比較すると、この関係性が確認できることが多く、原油価格よりも「実質金利」が金価格の方向性を判断する際の重要な軸になりやすいといえます。

米ドル/円レート

金は国際市場で米ドル建てで取引されるため、一般に「米ドルと金価格は逆相関になりやすい」といわれます。ただし、この逆相関が強く表れやすいのは、米ドル/円レートそのものではなく、米ドル指数(DXY)に代表される“ドル全体の強弱”です。

米ドル指数(DXY)と金価格の関係

米ドル全体が強い(DXY上昇)
→ ユーロやポンドなど他通貨ベースでは金が割高になり、需要が弱まりやすい
→ ドル建て金価格が下落しやすい

米ドル全体が弱い(DXY下落)
→ 他通貨から見ると金が割安に映り、需要が高まりやすい
→ ドル建て金価格が上昇しやすい

米ドル/円の位置づけ

いっぽう、米ドル/円レートは、日本の投資家が注目する「円建て金価格」に大きな影響を与えます。円建て金価格は、基本的に次の式で表されます。

円建て金価格 ≒ ドル建て金価格 × ドル/円レート

そのため、ドル建て金価格が横ばいであっても、

ドル/円が上昇(円安)→円建て金価格は上昇
ドル/円が下落(円高)→円建て金価格は下落

となるわけです。

市場心理と通貨の動き

なお、経済不安時の通貨の動きは常に同じとは限りません。

  • リスクオフ局面では米ドルと円がともに「安全通貨」として買われ、必ずしもドル安になるとは限らない
  • 米国固有の金融不安が強まる場合には、ドル安が進むこともある
  • リスクオン局面では米国への資金流入によりドル高になりやすく、相対的に金には資金が向かいにくい

「ドル建て金価格の動き(主に米ドル指数や実質金利の影響)」と「為替レートの変動(円建て金価格への影響)」を分けて考えることが重要です。

インフレーション

金は「インフレに強い資産」といわれており、インフレの状況下やインフレ懸念が高まると、金価格が上昇しやすくなります。

インフレが進むと、現金や固定金利の債券は物価上昇によって実質的な価値が目減りします。いっぽう、金は通貨ではなく実物資産であり、長期的にはインフレ下でも価値を維持しやすいとされることから、「インフレヘッジ(インフレ対策)」として資金流入が起こるのです。

実際、世界的な金融不安やインフレ懸念が意識された局面では、金価格が大きく上昇した例があります。

2008年のリーマンショックでは、一時的に流動性確保のため売られる局面があったものの、各国の大規模な金融緩和や将来のインフレ懸念が強まり、金価格は2009年以降にかけて上昇しました。

このように、インフレへの懸念が高まると、「現金や債券だけでは資産を守りにくい」という意識が働きやすく、金がリスク分散やインフレ対策の手段として注目される傾向があるのです。

地政学リスク・世界情勢

金価格は、地政学リスクや世界情勢の変化にも大きく左右されることがあります。

国際紛争やテロ、政情不安が高まる局面では、株式や通貨などのリスク資産から資金が流出しやすいのです。

2026年1月は産油国であるイランで反政府デモが勃発。この地政学リスクの高まりなど複合的な要因を背景に、1トロイオンス=4600ドル超という高値を記録しました。

緊張が和らぎ景気回復への期待が強まると、投資マネーは再び株式などのリスク資産に向かいやすく、金価格が軟調になる場面も見られます。


今後、原油と金は相関関係に戻る?

今後も特定の局面では原油と金が同じ方向に動く場面が考えられ、その理由はおもに2つあります。

①中東情勢の緊迫や地政学リスクの高まり
原油:供給不安への懸念で原油価格が上昇
金:安全資産としての需要の高まりで金価格が上昇

②インフレの加速
原油:原油価格の上昇は物価高要因のひとつ
金:インフレヘッジとして金が買われる

しかし、再びコモディティバブルのような極端な相場が起きた場合、「原油と金は常に同じ方向に動く」と前提にするのは注意が必要です。

相関は時間とともに変動しやすく、両者は同じコモディティでも果たす役割が異なるため、長期的に相関そのものを投資判断の軸に据えるのは慎重に考えた方がよいと考えられます。

用語解説
コモディティ:一般的に「商品」を指す言葉。原油や貴金属、穀物など国際的に取引されるものの総称をいう。

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金価格は原油価格だけでは読めない!指標を押さえることが重要

ここまで見てきたように、金価格は原油価格だけでなく、実質金利・ドル円レート・インフレ率・地政学リスクなど、多くの要因が重なり合いながら日々変動しています。

原油と同方向に動く局面もあれば、逆方向に反応する場面もあり、「原油価格だけで金価格を読む」ことには限界があります

売り時・買い時を逃さないためには、原油市況に加え、各国の金融政策、物価動向、為替、国際情勢などの指標をこまめに確認し、金価格の変化を継続的に追うことが重要です。

参考文献:
第1節 足下の原油価格下落の要因分析と今後の展望|経済産業省

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